これならできる! 一人暮らしでも手軽に、食事のバランスアップ術

2023/11/14 掲載

近年、一人暮らしの単身世帯が増えているとニュースで見聞きすることも多いのではないでしょうか。進学や単身赴任の他、家族の形が変わる様々な理由により一人暮らしになる方も多いでしょう。実際に国税調査でも単身世帯の割合は増加傾向にあり、特に東京では上京する若者も多いため、単身世帯が東京都の世帯全体の50%を超えるそうです。※1

今回は、これからも増えるであろう一人暮らしの方の食事の栄養バランスについてお話します。

一人暮らしは食生活が偏りがち

厚生労働省から発表されている「健康日本21(第2次)」(以下「健康日本21」と記載)や「食育推進基本計画」においては、「主食、主菜、副菜がそろう食事を1日に2回以上とる」ことが目標とされています。主食(ごはん、パン、麺など)・主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)・副菜(野菜、 海藻、きのこ類など)を組み合わせた食事を摂った場合、そうではない食事と比べて、必要な栄養素の充足が期待できます。

一人暮らしでは、このようなバランスのよい食事の頻度が少ない傾向にあることが様々な調査データから確認できます。

例えば、大学生を対象とした調査では、一人暮らしの学生は実家暮らしの学生と比べて朝食を抜くなど欠食や偏った食事になりがちな傾向にあります。
また、一部の勤労男性を対象とした調査では、配偶者ありとなしでは、配偶者ありの層が、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が多かったという結果になりました。

一人暮らしの高齢者においては、家族と同居している高齢者と比較すると「食事回数」は少なく、コンビニなどで購入した弁当の利用率が高く、偏った食事パターンとなっている人が多いという調査データもあります。私が担当してきた食生活のカウンセリングや特定保健指導などで様々な方とお話してきた中でも、一人暮らしを理由に食生活をおろそかにしてしまっている方が多く見られました。

特に不足しがちな野菜

この主食・主菜・副菜の中で、最も不足しているのが副菜、つまり野菜、海藻、きのこ類です。
「健康日本21」では生活習慣病などを予防し、健康な生活を維持するための目標値の一つに「野菜類を1日350g以上食べましょう」と掲げられています。実際に日本人全体での野菜の摂取は不足しており、日本人(成人)の1日あたりの平均野菜摂取量は男性約290g、女性約270gとなっており、今よりプラス70gの野菜摂取が必要といえます。

全体の平均値ですので、もともと食事の偏りが目立つ単身層ではさらに不足していることが懸念されます。大学生を対象としたデータでは、一人暮らしをしている人の約50%は野菜摂取量が0~1皿(1皿=60g程度)だったという結果もあります。

よく耳にする野菜が摂れていない理由としては以下の内容が挙げられます。

・調理の手間をかけられない、またはキッチンの狭さやスキルの問題で調理ができない
・野菜が高い、使いきれないなどコスト上の理由
・野菜が苦手、嫌い、好んでは食べない
・野菜は今の量で十分だと思っている

たまに野菜を摂れないことがある程度ならよいですが、慢性的に野菜不足が続いてしまうと、徐々に体の不調の原因になってしまうかもしれません。

野菜を摂らないとどうなるのか

野菜不足の食事では、代わりにごはんなどの主食や、肉類を多く摂ってしまい、糖質や脂質の摂り過ぎから太りやすくなったり、健康診断の数値が悪くなったりといった影響が考えられます。
また、ビタミン、ミネラルや食物繊維などが不足しやすくなり、腸内環境の悪化から便秘や肌荒れにつながったり、免疫の低下を招くことも懸念されます。

野菜不足が招く症状への対策については、以下のコラムを参考にしてみてください。

症状 参考コラム
腸内環境の悪化 ぽっこりおなかにさようなら!腸内環境を整えて健康美人に
免疫の低下 私たちのからだは腸が守っている?!知られざる腸の免疫機能
肌荒れ 肌の乾燥を防いで美肌を保つには?
疲れやすくなる だるい、疲れが抜けない…そんな時は食事で疲労回復!
体臭が出やすくなる 気になるニオイは食生活が原因かも?からだの中からの消臭対策
生活習慣病リスク上昇 食事からメタボ予防!

手軽にバランスよい食事を

野菜を摂るには自炊をしなくてはいけないけれど、自炊は難しい……と考えてしまい、とたんにハードルが高くなる方も多いと思います。まずは簡単なことからとりいれてみましょう。

  • 時間がないときには
    まずは主食・主菜・副菜を摂る意識を!
    1品の料理の中にも主食、主菜、副菜の要素があればOK!

    例えば…
    サンドイッチやおにぎり(主食+主菜)→野菜ジュース(副菜)をプラス

    カップ麺(主食)→たまごやカットわかめ(主菜+副菜)をプラス

  • 野菜をあと1品プラス
    市販の弁当や定食にもう1品副菜を足してバランスアップ!

  • コンビニであと1品
    サラダ、野菜の惣菜、具だくさんのスープ・味噌汁
    味付めかぶ、もずく酢など

  • そのまま食べられる野菜
    ミニトマト、きゅうり、カット野菜など

  • 冷凍野菜の活用
    ブロッコリー、かぼちゃなど→温野菜サラダやスープに
    ほうれん草、小松菜など→味噌汁の具材に

いずれも、コンビニで比較的手に入りやすいものです。

自炊をする方なら、寒い季節には鍋ものをすれば簡単に野菜がとれますね。 量を作りすぎないようにしたり、加熱しすぎない段階で分けたりしておき、翌日以降に味付けを変えて食べるのもよいでしょう。

できることから

一人暮らしでは、仕事も家事も自分ひとりで担う必要がありますが、自由に過ごせるのがメリットです。自分ひとりではついつい適当な食事でいいと思ってしまう方もいるかもしれませんが、替えが効かないご自身の大切な体を作るのは「食事」です。

まずはひとつでもできることから取り入れていけるとよいですね。

【参考文献】
※1 令和2年国税調査
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/01/20/07.html

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。