最も眠れないのは40代?!良く眠るコツを考える
2012/03/28 掲載
皆さんは自分の「睡眠」に自信がありますか?
睡眠は脳を休ませ、体を修復させる生命維持にかかわる重大な時間。けれども寝付きが悪かったり、寝ても疲れが取れなかったり、そもそも時間が取れなかったり…睡眠に関する悩みを持っている人は実は多くいます。
今回は、日本人の睡眠事情やよく眠るコツについてご紹介します。
日本人で「最も眠っていない」のは男女とも40代
総務省統計局の「社会生活基本調査報告」の最新データ(平成18年度調査結果)を調べてみますと、20歳から60歳の日本人男性の睡眠時間平均値(平日)は7時間34分、女性は7時間03分でした(女性の方が少し睡眠時間が短い傾向)。
図1、2を見ていただくと明確なのですが、男女とも30代から急激に平均睡眠時間が短くなり、40代で最短となることがわかります。
特に40代女性の平均睡眠時間は7時間に届かず6時間50分程度です。30代後半から40代は段々仕事上の責任が重くなり就労時間が長くなりがちですし、
家庭でパートナーをサポートする立場の方も、それに合わせて時間調節をしますから、こういった傾向になることも頷けます。
しかもこの数値は様々な属性の方が入った統計ですから、特に仕事の忙しい方やそのパートナーの方々はもっとずっと短い睡眠時間で平均値を低い方に引っ張ってらっしゃることでしょう。「もっと眠りたい!」という皆さんの「心の叫び」が聞こえてくるようです(涙)。
かく言うワタクシもまさにこの年代なのですが、ハッキリ言って平日は5時間眠れば良い方で・・・平均値を短い方に引っ張っている1人でございます(涙)。ああ、この年代は皆さん忙しくてつらいのだろうな、みんな大変なんだな…と同年代に「仲間」がたくさんいそうなことが見えてきます。
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睡眠不足の改善に「うたた寝」「お昼寝」は効果的!?
では十分な睡眠時間を確保することが難しい状況の中、必死で身体を起こし頑張らなきゃいけない時にはどうすれば少しはマシなのでしょうか(本当はゆっくり休んで眠るべきなのは百も承知ですが)。
長時間眠らず起きている状態を続ける「断眠実験」を行うと、たいていは一晩徹夜したくらいの時間経過後から、自分では覚醒しているつもりでも一時的に意識を失うように瞬間的にコクンと眠ってしまう一過性の睡眠現象「マイクロスリープ」が現れはじめます。
このマイクロスリープ、夜更かしした次の日の午後など・・・身に覚えのある方も多いのではありませんか?
(私は覚えありまくりです(^^;)。)実は時間にするとほんのわずかなこの瞬間的な睡眠が意外に脳の回復を促す効果があるかもしれないという説があるのです。
マイクロスリープは睡眠不足を察知した脳の一種の防衛反応で、自分の脳を守るために脳自身が「眠れ!」と強制的に眠らせてしまう状況で、瞬間的に深い睡眠に入るため短時間でも脳の回復を早めるのだそうです。
眠ってはいけない状況で、無意識のうちに突然強い睡魔に襲われるのは大変危険です。そのような状況を避けるためにも、睡眠不足の自覚がある時にはそうなる前に「意識的に」「自発的に」マイクロスリープを起こしてしまうことをお勧めします。安全な場所と時間を選んで、意識的に「少しお昼寝する」のです。短時間でもこのような意識的マイクロスリープで深い睡眠をとることができれば、有効な睡眠不足対策になり得ると言われています。
特に午後に大事な商談や会議が控えているような日には、思い切ってお昼休みやちょっと抜けられる時間に軽くうたた寝して(20分程度で十分効果があると言われています)、脳を少しでも回復させておけばだいぶ頑張りが利くようになるので、眠いまま必死で腕をつねったりして意識朦朧としながら仕事や勉強をこなすよりずっと効率良く物事を進められ、成果も得られるはずです。ただし昼間なのに深く眠りすぎて長時間眠ってしまうことは避けましょう。正常な生活リズムをコントロールしている自律神経のバランスを崩してしまう恐れがあるそうです。
短時間の軽いうたた寝やお昼寝の効果が意外に大きいだなんてちょっとだけ救われる気がしませんか?周囲の皆さんの理解さえ得られれば、昼間の隙間時間を上手く使って意外と簡単に睡眠不足をある程度カバーすることができそうです。
「十分な睡眠時間」って8時間?
・・・とはいえ、やっぱりできれば睡眠不足は避け十分に眠りたい!ですよね。でも「十分な睡眠」とは何時間を指すのでしょうか?なんとなく「8時間」を基準に睡眠時間の長短を意識してしまう方が多いと思いますが、実はこの「8時間」には科学的根拠があまり無く、統計上8時間程度の睡眠の人が多いため、そのように言われるようになっただけのことなのだそうです。
「その人に適した睡眠時間」というのは本当は個人差が非常に大きく一概には言えないのだそうですが…、それを判断する一つの根拠として「眠りの質」というものが近年よく言われるようになりました。
睡眠には大きく分けて2つの種類の眠りがあることはよく知られていますよね。眠っていても閉じた瞼の下で眼球が動き大脳が活動している「レム睡眠」と、大脳も休んで眠りに入っている「ノンレム睡眠」。「ノンレム睡眠」は更に睡眠の深さによって4段階に分けられます。
「ぐっすり眠った」と思えるのはこのノンレム睡眠の第3~第4段階の深い熟睡状態に入った時なのだそうで、「十分に眠れた」と感じられる「質の良い眠り」を得るには、眠ってから3時間ほどの間にこのレベルの睡眠がまとまって得られる状況なのだとか。そうした「質の良い眠り」が効率良く得られていれば比較的短時間でも「ぐっすり眠れた」感があり脳の休息はしっかりとれたことになります。
ですから、「十分に」眠れたかどうかを客観的に判断するには、本来は時間ではなく「眠りの質」を考慮しなくてはならないのです。
タニタから「睡眠の状態」を記録することができる「睡眠計」という装置が開発されましたので、ご興味のある方はこちらの情報もご覧ください。
「眠りの質」を改善すれば業績も成績もUP!?
では、「眠りの質」を高めてできるだけ「ぐっすり眠れた」感を得るにはどんなことをすれば良いのでしょうか?睡眠は、体調や精神状態とも深く関っていますので「これをすれば良い」という答えはありませんが、様々な研究結果から「質の良い眠り」へ導く助けになるような事柄もわかってきています。その中から簡単に実行できそうなことを下記に挙げてみます。
1)寝る前には部屋を暗く静かに保つ
深い睡眠を促すメラトニンは光を感じると分泌が抑えられるため
2)眠りにつく2時間前くらいに身体を動かす適度な運動をする
運動で脳が活発に働くため短時間で深い睡眠になる。2時間程度前が最も効果的。直前はNG。
3)眠る2時間程前にゆっくりお風呂に入る
体温を上げてから徐々に下げて行くことで深い睡眠へ導かれる。直前に入るのはやっぱりNG。
4)毎日何か小さなことでも達成感を持つようにしポジティブ思考で精神の充実をはかる
実はこれが非常に重要らしく短時間睡眠でも頑張れる人の典型とのこと。
何を今更・・・というようなことも敢えて書いてみましたが、この「睡眠の質」を侮ってはいけません!仕事の業績や学習効果などにも少なからず影響がありそうなのです。
ある企業で、生活時間が不規則になりがちな研究職の社員に対して睡眠教育セミナーを実施したところ、それだけで特許や論文の数が1~2割増え知的な生産性が大きく改善された…という例まであるそうなんですよ!!どんな眠り方が自分にとって「ぐっすり眠れた」「質の良い睡眠をとれた」と思えるか、自分なりの良いパターンをつかんでおくことも大切ですね。
最後に・・・
いかがでしたか?今回「睡眠の質」を高めれば、ある程度短時間でも疲労回復できて頑張れるし成果も上げられる・・・ということで「質の良い睡眠=短い睡眠時間で済む」かのような印象を受けられたかもしれませんが、そうした面ばかりでもありません。長い時間眠る人の方が芸術的な創造性のある思考ができる傾向もあったりするようですし、長い睡眠時間が必要な場合にはそれなりの「脳がそれを要求する」理由があるはずなのです。
歴史上の人物では、アインシュタインが長時間睡眠だったとか、エジソンやナポレオンは短時間睡眠だったとか言われているようで・・・調べてみると面白いですよね。 何しろ睡眠は奥が深いです。
人間は一生のうちでいったいどれくらいの時間眠るのでしょう・・・。夢は何のために見るのでしょう・・・。ミステリアスな「眠り」の世界、興味深いですよね(^^)。
参考資料:
1)総務省 統計局・政策統括官・統計研修所HPより「平成18年社会生活基本調査」
2)小林敏孝 「眠りを変えれば仕事はうまくいく:成功する人の睡眠マネジメント術」