打てば良かった!と後悔しないためのワクチン情報

2015/11/24 掲載

 

小さなお子さんを持つ方はもちろん、インフルエンザで辛い体験されたことのある方などは、感染症の予防対策としてワクチン接種の重要性はよくご存知でしょう。ですが、副反応のニュースを耳にすることもあり、安全性に疑問を感じている方も多いと思います。今回は、ワクチンについての基礎知識やメリット・デメリットについてご紹介します。

知ってる?ワクチンの3つの分類

ワクチンとは、「病原体の毒性を弱めたり、無毒化したもの」です。ワクチンを接種することで、ヒトが本来持っている免疫システムが働き、その病原体への免疫を未然にに獲得することができ、感染を防いだり、感染時の重症化を防ぐ効果が期待されます。ワクチンは制度によって3つの分類に分けられます(2015年11月時点)。

  定期接種ワクチン 任意接種ワクチン
種類 ジフテリア 百日咳 ポリオ 麻疹 日本脳炎 破傷風 BCG ヒブ 小児の肺炎球菌 水痘 ※子宮頸がん ※インフルエンザ ※肺炎球菌 A型肝炎 B型肝炎 狂犬病 髄膜炎菌 流行性耳下腺炎 ロタ インフルエンザ 肺炎球菌(成人)など
接種の目的 感染症のまん延予防(公衆衛生) 個人の予防
費用 市区町村が負担

          個人が負担

  (市区町村や健康保険等で一部助成あり)

 

1.定期接種ワクチン自治体が費用負担してくれる重要度の高いもの

ワクチン接種時期になると、お子さんや高齢者など対象者のいるご家庭に接種用の問診票が送られてくるものです(国の制度変更により内容や対象等が変わることもあります)。費用は自治体などが負担しますが、接種期間が定められており期間を過ぎると自己負担となることがあるため注意が必要です。

※65歳以上の高齢者の肺炎球菌・インフルエンザなども定期接種ワクチンですが、自己負担金があります。

※子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、2014年6月14日以降、積極的勧奨が控えられています。

 

2.任意接種ワクチン自己負担

接種するかどうかは本人や保護者に任されていますが、決して医学的に重要度が低いというわけではありません。

例えば、流行性耳下腺炎(おたふく)の推定患者数は年間100万人以上とも言われており、重症化した場合は※無菌性髄膜炎や精巣炎・卵巣炎などを発症したり、難聴などの後遺症が残ったりするケースもあります。

またロタウイルス胃腸炎も、乳幼児では重症化しやすいもので、ワクチン接種の効果が大きく期待されています。

※無菌性髄膜炎:髄膜炎で細菌が検出されなかった場合の診断名で、ウイルスや真菌などが病原体である場合が多い

 

3.その他のワクチン海外渡航時に必要なもの、個人負担

黄色ワクチンなど、WHOの国際保健規則により定められたものや特定の国に渡航する際に接種が必要なものがあります。

海外へ渡航予定のある場合は、厚生労働省検疫所の情報などを確認しておきましょう。

 

生ワクチンってなに?

ワクチンは、生ワクチンと不活化ワクチンにも分けられます。

  生ワクチン 不活性化ワクチン
特徴 生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたもの 細菌やウイルスから免疫をつくるために必要な成分を取り出して毒性を不活性化したもの
種類 麻しん 風しん 流行性耳下腺炎 水痘 BCG ロタなど ジフテリア 日本脳炎 肺炎球菌 ヒブ インフルエンザなど
持続期間 一般的に長い 一般的に短い
接種回数 1~2回 3~4回+追加接種
副反応 発熱や倦怠感などの全身反応が比較的多い 全身反応はまれ、主に接種部位の局所反応
接種間隔 27日以上 6日以上
妊婦 接種不可 リスクにより対応が異なる

生ワクチンは不活化ワクチンより副反応がやや重くなることがありますが、持続期間が長いため接種回数を少なくできるといったメリットもあります。

ワクチン接種のメリット

ワクチン接種のメリットは、その病気に感染したり重症化するリスクを大きく減らすこと。

ですが、日本は先進国の中ではワクチンの接種率が低い国となっています。そのため他の先進国に比べ多くの方が本来ワクチンで防ぐことのできたはずの感染症 にかかり、重い合併症に苦しんだり命を落としたりしています。

欧米の多くの国で定期接種とされている流行性耳下腺炎(おたふく)やB型肝炎のワクチンは、日本では未だに任意接種(2015年11月現在)の状況。また、子宮頸がん、ヒブ、小児用肺炎球菌などのワクチンについても、2013年4月1日から予防接種法改正法により予防接種法に基づく定期接種となったばかりです。

 

~接種したのに発症してしまうのはなぜ?~

ワクチン接種の効果は、残念ながら100%ではありません。「インフルエンザワクチンを接種したのに発症した!」という話は特によく耳にしますね。その理由の一つとして考えられるのは、インフルエンザウイルスのタイプが数種類あり、それぞれの遺伝子が進化を続けていること。インフルエンザワクチンは、流行すると予測されるタイプのウイルスに合わせて製造されますが、予測と異なるタイプが流行したり、遺伝子進化のスピードが速すぎたりした場合にそのようなことが起こってしまうのです。

 

また、接種時期も効果に大きく影響します。インフルエンザワクチンは、予防接種をして1ヶ月後に抗体の効果がピークとなり、3ヶ月後以降は徐々に低下します。予防接種の効果は一般的に5ヶ月といわれてますが、最も流行しそうな時期の1ヵ月前を目安に接種をすることが発症予防のポイントと言えます。

副反応について

ワクチン接種の際に、必ず知って頂きたいことが副反応についてです。 副反応が出る原因は、ワクチンに含まれるウイルスや細菌に対して体内の免疫システムが過度に反応したためと考えられます。もしもの時に慌てず対応するために、主な症状や適切な対応について事前に確認しておくことが大切です。

 

・接種部位が赤くなる

 三種混合ワクチンで多く見られます。 数センチの腫れであれば治療の必要はありません。

 

・熱が出る

 特に生ワクチンで多く。麻しん(はしか)では約20%となります。 多くの場合は微熱が出る程度ですが、38度を超えたり通常と様子が違うなどの場合は受診しておきましょう。

 

・アレルギー反応

 じんましんや口腔のしびれの他、まれにアナフィラキシーショックによる意識障害など重篤な症状が出ることがあります。 アレルギー体質の方や小さなお子さんの場合は、予防接種後30分は医療機関内で安静にしているなど、注意をする必要があります。

※アレルギーのある方は、予防接種の前に必ず申告することになっています。またワクチン接種の可否や対応は医師の指示に従うことが大切です。

 

いかがでしたか?最近では「副反応が怖いからワクチンは接種しない」という方も多いようですが、ウイルスの病原性を弱めたワクチンで副反応が出るということは、実際に感染した場合はさらに重症になるとも考えられます。ワクチンは、年齢や家族構成、職業、またアレルギー体質かどうかによって、接種した場合のメリットや副反応のリスクなどが異なる場合があります。それらをしっかりと見極めた上で、ワクチン接種の判断をされることをおすすめします。

参考文献:厚生労働省資料(予防接種法 海外渡航のための予防接種

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。