からだのリズムと健康
2012/04/12 掲載
私たちが住む日本は大部分が温帯に位置しており、春夏秋冬の四季という季節のリズムをもっています。
そしてからだや五感(視、聴、嗅、味、触の5つの感覚)は、四季や生活環境に影響を受けながら「からだのリズム」を形成しています。
今回のコラムは「からだのリズム」の日周リズム情報についてです(^^)
「からだのリズム」
「からだのリズム」を知る簡単な方法としては、体重、血圧、脈拍測定などがあります(からだカルテをご利用の方であれば、ご自身の体重リズムを サイトで簡単にチェックできますね!)また、健康管理のため、ご自身、またはご家族の体温チェックをする機会が増えていることで しょう。
では、ここで質問です!あなたの平熱は何度でしょうか?
一般的には「36℃が平熱」「37℃以上で熱」と認識することが多いと思いますが、健康な日本人を対象とした正確な体温の調査において、平均腋窩温は36.89±0.34℃でした(図1)。
この結果は体の深い部分の体温を30分以上かけて正確に測定したものですので、家庭での計測結果と少し異なりますが、健康な日本人平均体温は36.55~37.23℃ということになります。また、体温は常に一定ではなく、食事、運動、気分、風邪の有無などの影響を受けて変動し、1日の中でリズムがあるといわれていますので“いつ”測定するかで値が変化します(図2)。
このようなリズムは日周リズムといいますが、体温だけではなく、体重や血圧などにもあります。また女性ではホルモンの影響を受けた性周期があり周期的に体重や気分が変化します。自分の体温や体重、血圧が、1日の中でどのように変化するか?皆さんご存知ですか?きっと把握している方は少ないと思いますので、一度自分の「からだのリズム」をチェックしてみてはいかがでしょうか?
「からだのリズム」はどこで起こるの?
1日の中で変動する体温や血圧。
それは一体、何がコントロールしていると思いますか? 脳?それとも心臓?筋肉? 「からだのリズム」のコントロールには自律神経が大きく影響していることは周知のことと思いますが、実は5つの「体内時計」が大きく関係しているのです(図3)。
さてこの「体内時計」!デジタルでもアナログでもなく、どんな優秀なエンジニアでも作ることのできない高精度な時計で、その正体は、なんと!「遺伝子」なのです。
「体内時計」に関わるこの「遺伝子」は「時計遺伝子」とよばれ、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)に「主時計遺伝子」が、肝臓などの細胞中には「抹消時計遺伝子」があり、25時間周期の概日リズムを作って刻々と時を刻んでいるのです。
ここで1つ疑問が・・・!?
地球は24時間リズムなのに、なんで「体内時計」は25時間リズムなの?1時間のズレがある「体内時計」に私たちの大切なからだを任せてしまっていいの???
答えは・・・
任せても大丈夫なのです!でも・・・任せるには、ちょっとした微調整・工夫が必要となります。その微調整とは・・・!?
自動修正機能を持った体内時計
私たちのからだに備わっている「体内時計」は、地球の日周リズムに応じて活動するために、毎朝、体内時計の針を修正(位相修正)しているのです。毎朝、どのように修正しているのか?というと・・・
まず“朝の光”で「主時計遺伝子」の、“朝ごはん”で「抹消時計遺伝子」の針を24時間のリズムに合わせているそうなのです。
よく、朝日を浴びると目覚めがよくなる!朝食を食べると脳の働きがよくなる!といわれますが、“早起き“と”朝食“は「体内時計」のリセットにも役立っていたのです!
環境にあわせて自動修正できる人間のからだって素晴らしいですね(^^)
体内時計の異常が起こると・・・
では、朝日を浴びずに、朝ごはんを食べないと、私たちのからだはどうなってしまうのでしょうか?
ある研究では、朝食欠食者は肥満になるリスクが高い、肥満の原因は生活リズム(時計遺伝子)の乱れにある、と報告されています(図4)。
朝日を浴びない、朝食を食べないことは、体内時計に乱れを生じさせ、生体の様々な機能のリズム、代謝機能を狂わせ肥満に繋がりますので、“早起き”をして“朝日”を浴びて”朝ごはん“をとることは肥満の予防になるのです。 夜型生活の方、早起きしているけど朝食を抜いている方はダイエットをスタートする前に体内時計のリセット“朝日を浴びて朝ごはん”から始めてはいかがでしょうか。
<参考文献,参考図書>
日本栄養・食糧学会監修:時間栄養学,女子栄養大学出版部,2009 田坂定孝ほか:健常日本人腋窩温の統計値について,日新医学44(12):635-638,1957 Ma Y, Bertone ER, Stanek EJ 3rd et al.:Association between eating patterns and obesity in a free-living US adult population. Am J Epidemiol 158(1):85-92,2003