移りゆくたばこ事情

2026/05/12 掲載

かつて、居酒屋や昭和ロマン漂う喫茶店では煙が揺らめき、テーブルには灰皿があることが日常でした。そこから徐々に灰皿は撤去され、喫煙ルームができていき、令和の今、その景色は一変しています。紙巻きたばこから「加熱式たばこ」や「電子たばこ」へ。そして「マナー」だったものは、今や「法律」による厳しいルールへと姿を変えています。

煙が見えなければ、においが少なければ、自分も周囲も安心なのでしょうか。実は、新たなリスクが次々と浮き彫りになっています。

煙の見えないたばこの登場

「煙やにおいが少ない」「かっこいい」と、従来の紙巻きたばこから加熱式たばこや電子たばこへ切り替えている人が多くいます。

移りゆくたばこ事情

● 加熱式たばこ
…たばこの葉を加熱して蒸気を発生させ、ニコチンを吸います。

紙巻きたばこに比べ、一酸化炭素などは大幅にカットされていますが、ホルムアルデヒド(発がん性物質)やニコチンなどの有害物質は含まれています。研究によっては、ホルムアルデヒドが紙巻きと同程度、あるいはそれ以上検出されるケースも報告されています。

● 電子たばこ
…リキッドを電気加熱して発生するエアロゾル(霧状の粒子)を吸い込みます。

日本ではニコチン入りは販売禁止ですが、海外製などには含まれる場合があります。加熱の温度設定によっては、リキッドの成分が熱分解され、予期せぬ有害物質(アセトアルデヒドなど)が発生することがわかってきました。

元来の紙巻きたばこの煙には、化学物質や発がん性物質が多く含まれ、血圧を急上昇させ、動脈硬化を促進、肺がんや心筋梗塞、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のリスクを高めます。また、喫煙者が吐き出した副流煙は有害物質が凝縮され、がんや心疾患、喘息などの健康被害を周囲に引き起こすリスクが非常に高いこともわかっています。

煙の見えない(少ない)たばこなら、健康への害が少ないのでしょうか。
これらは歴史が浅く、20年、30年吸い続けた先にどんな病気が待っているのかはまだ誰にも分かりません。「かっこいい」だけでは取り返しのつかない未来が待っているかもしれません。

消した後も残るたばこの影響

三次喫煙(サードハンド・スモーク)という言葉を聞いたことはありますか。

たばこを吸い終わった後も、吐く息からは約45分間にわたってニコチンや有害物質が排出され続けていることが、研究で明らかになっています。「外で吸ってきたから大丈夫」と部屋に戻り子どもを抱っこしたり、同僚と話をしたりしていませんか?

そのうえ、あなたの服や髪に付着した有害物質は、部屋の壁などに移り、長い時間をかけて再びガスとして空気中に漂います。受動喫煙は、見える煙だけではないのです。

「望まない受動喫煙をなくす」ことを目的に法律はさらに厳しくなり、以前は「小さなお店なら吸える」という例外がありましたが、現在では多くの自治体において、屋内での喫煙は事実上できなくなっています。

日本人の喫煙率の変化

最新の「国民健康・栄養調査」では、習慣的に喫煙している人の割合は全体で14.8%。男女別にみると、男性24.5%、女性6.5%です。年々減少傾向ではありますが、同調査の年代別データでは男性の40~50歳代で依然として3割を超え、大きな課題が残っています。

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実は禁煙願望を抱える人も多い!?

先の「国民健康・栄養調査」では、習慣的に喫煙している人のうち、「たばこをやめたいと思うか」と質問しています。その結果、全体の18.6%、約5人に1人は「たばこをやめたい」と考えています。

たばこをやめれば、自分も周りの人も健康になり、たばこを吸う場所を探す時間も手間も不要になり、金銭的な余裕も生まれます。

禁煙は他者の力を借りることで成功率アップ

最近の禁煙は「根性」ではなく、禁煙外来や市販薬を活用した「科学的アプローチ」が主流です。特にニコチンパッチや内服薬を用いた治療は成功率が高く、健康保険も適用(条件あり)されます。離脱症状を抑える薬剤や、吸いたくなる環境を変える行動療法も効果的です。

▼禁煙治療を利用することのメリット

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① 比較的楽にやめられる
→禁煙補助薬で禁断症状が抑えられるから楽に無理なく禁煙できる
② より確実にやめられる
→禁煙補助薬やカウンセリングで禁煙成功率がアップ
③ あまりお金をかけずにやめられる
→健康保険を使った場合、3カ月間(計5回)の禁煙治療の自己負担額は約12,000円~20,000円(※)です。1日1箱(600円)たばこを吸った場合の代金(3カ月で約54,000円)と比べると、治療を受けた方が費用を大きく抑えられます。
※3割負担の場合。医療機関や処方薬によって変動します。

時間がないからとあきらめているあなたも、オンライン診療など禁煙治療の裾野は大きく広がっています。まずは、一歩踏み出してみませんか。

【参考文献】
・禁煙支援マニュアル(第二版) 増補改訂版
厚生労働省 健康局 健康課編
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/dl/addition01.pdf
・禁煙は愛:日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/kinen/start/

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。