保健師の体験レポート!遺伝子検査やってみた

2024/06/11 掲載

年齢を重ねるってこういうこと? 遺伝子検査と生活習慣

  • ※インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されているのにも関わらず、インスリンがからだに作用しづらくなり、血糖がからだに取り込みにくくなる状態。
    運動することで、インスリン抵抗性が改善し、血糖がからだに取り込みやすくなりからだで使われるようになります。

遺伝子検査って何?

人間の各細胞には2万数千種類の遺伝子が含まれていて、この遺伝子が人体の細胞一つ一つの働きを制御しています。これらの遺伝子を構成するDNAの遺伝情報を解析し、ある人が固有に持っている遺伝情報を明らかにする検査を遺伝学的遺伝子検査と呼びます。

今回はこれを取り上げ、単に遺伝子検査と言います。遺伝子検査は、近年急速に研究が進んで、特定の遺伝子が人体の細胞の中でどのように働き体質などにいかに影響するか判明してきたために可能になりました。

なお、特定の遺伝子の保有や欠損が疾病の原因となる場合、その遺伝子検査は遺伝性疾患の診断という医療目的でされるため、このコラムでは扱いません。今回のコラムでは、主に個人の健康増進等を目的として行われる、非医療目的の遺伝子検査を対象としています。

遺伝子検査の結果をどう捉えるか

今回の遺伝子検査の結果をどう捉えるか。検査の結果を受け止めるために、大切なポイントがあります。

1. 遺伝的要因と環境的要因

  • ①遺伝的要因
    ある体質になったり病気にかかる遺伝的要因は、それがどのような体質かによって、あるいはその病気によって、それぞれ関与する遺伝子の数やそれらの遺伝子による影響の度合いが異なります。太りやすさのような体質や身長のような身体上の特徴は、複数の遺伝子の関与によって決まっていることが多いと言えます。
    例えば、肥満に関連する遺伝子は、脂肪代謝に関与する遺伝子、エネルギー消費に影響する遺伝子、食欲の抑制に関連する遺伝子など、100種類ほど報告されています。

    一方、今回のような一般的な遺伝子検査で明らかにできる遺伝子の数は、検査会社により異なりますが、数個程度のものが多い傾向にあります。
    まだ、研究で明らかになっておらず、検査の対象になっていない遺伝子が、あなたの体質に重要な役割を果たしている可能性が無いとは言い切れません。また、肥満に大きな影響があるとされている遺伝子を、あなたが持っていたとしても、その影響の度合いを測るのは簡単なことではありません。
  • ②環境的要因
    「肥満になるかならないか」を決める大きな要因として「環境」があります。食事の好みや量、食べる時間、運動量、ストレス、睡眠時間などの環境的要因は、その人が肥満になるかどうかに、大きな影響を与えます。検査の項目にもよって違いはありますが、体質は、遺伝的要因と環境的要因の両方の影響を受けています。
    また、年齢を重ねると環境的要因の影響はより強くなる傾向があります(加齢→遺伝子要因<環境的要因)

体質や身体上の特徴には、これら2つの要因の影響があること及び、それぞれの要因の特徴とそれらの関係を理解して、結果を受け止めることが必要です。

また、遺伝子検査をした結果をどう受け止め活用するかは、検査した人の自己責任になります。結果について疑問を持ったとしても、非医療目的の遺伝子検査については、医師のオピニオンを聞くことができるとは限らないことに留意する必要があります。

2. 特定の結果を見ないという選択肢

検査の中には、いわゆる遺伝病や、アルツハイマー病の発症リスクを高める遺伝子のように、ある1つの遺伝子をもつだけで、発症リスクが著しく高まるものもあります。そうした項目の検査結果については、将来の発症リスクを、高い確率で知ることになるため、結果を見るか見ないかは、慎重な判断が必要になります。検査とサービスの内容を事前によく確認した上で依頼することをお勧めします。

また、検査後に心の準備ができていない場合には、結果を見ないという判断も大切です。

最後に

遺伝子検査がとても身近なものになりつつあります。遺伝子結果を受けてみようかなと思っている方もいるのではないでしょうか。遺伝子検査自体の性質を理解し 、検査から導かれた結果から自分のからだのタイプを知って、健康や生活にどのように役立てていくのかが問われています。

健康増進を目的とした一般的な遺伝子検査の結果について留意する点は下記のとおりです。

  • ・医療的な診断がない
  • ・遺伝子検査を販売する会社によって確率の計算式が異なり、確率等の結果が違うことがある
  • ・今後、研究は進めば結果が変わる可能性がある
  • ・血縁者にも当てはまることがある

詳しくは、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野:遺伝子検査サービスを購入しようか迷っている人のためのチェックリスト10か条をご参照ください。

遺伝子検査を受ける・受けない、受けた後に結果をどう捉えるかも全て自己責任となります。是非、あなたが遺伝子検査を受けるメリット・デメリットについて、検査を受ける前によく考えてみましょう。
最先端技術を使ったあなたのためのパーソナルセルフケアを実現するために、ヘルスリテラシー(※)を高めていくことも大切です。

※ヘルスリテラシー:自分にあった健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解し、評価した上で使える力、活用する能力のこと。

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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