月経困難症って何?月経期間を楽に過ごすには(日常生活編)
2024/05/14 掲載
前回のコラム「月経困難症って何?月経期間を楽に過ごすには(基礎知識編)」では、婦人科のかかりつけ医をもち、症状があれば早めに受診することの大切さをお伝えしました。
今回は、生活習慣の改善から月経痛(生理痛)の緩和につながるセルフケアについてお伝えします。特に治療の必要はないけれども、月経期間中を快適に過ごしたい方や、すでに受診をして治療中の方にも役立ててもらえる内容です。
月経痛に影響を及ぼす生活習慣
月経痛に影響を及ぼす原因をいくつかご紹介します。生活習慣などにより症状を悪化させる原因になっている可能性があります。ご自身の生活習慣で当てはまることはないでしょうか。
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睡眠不足
脳にある視床下部は、自律神経やホルモン分泌をコントロールしています。
視床下部は睡眠不足や精神的なストレス、無理なダイエットなどの影響を受けやすく、自律神経やホルモン分泌が乱れる原因となります。女性ホルモンのバランスにも影響してくるため、月経不順などにつながることがあります。夜間勤務によって睡眠不足になっている人は、通常の時間帯で働く人よりも、鎮痛薬を必要とする程度の月経痛を訴える人が多いとする調査データ(※1)もあります。十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を高める対策をとりましょう。
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冷え
子宮周辺の血流が滞ると経血をスムーズに外に押し出せず、月経痛の悪化につながります。下腹部周辺を温め、血流をよくすることは痛みを和らげるのに効果的です。
体の冷えの原因は低体重(やせ)や筋肉が少ないことのほか、偏った食生活、運動不足、睡眠不足などの生活習慣も影響します。冷え対策の一例では、日常生活において体の内側と外側の両面から予防しましょう。冷たい飲食物は控えめに、お腹周りを冷やさず、締めつけないような服装にする、ゆっくり入浴することなどを習慣にするとよいでしょう。
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ストレス
睡眠不足の項目でも紹介していますが、ストレスがあると視床下部の機能や自律神経が乱れ、女性ホルモンの分泌も乱れてしまい月経周期や月経関連の症状に悪影響を及ぼします。また、ストレスも体の血流を悪くして、冷えにつながる一因となります。自分にあったストレス解消方法をもち、ためこまないことが大切です。
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喫煙(受動喫煙)
喫煙習慣があると月経痛の症状が重くなる傾向にあります。ニコチンなどの成分は、血流障害を引き起こし、身体の冷えにつながると月経痛を強める原因となります。また、たばこの成分は女性ホルモンにも影響します。たばこの成分を肝臓で分解する際に発生する薬物代謝酵素により、女性ホルモンの代謝を促進し、その働きを弱めてしまうこともわかっています。非喫煙者の方は受動喫煙にも注意しましょう。
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運動不足
運動不足によって骨盤内の血液の流れが滞ると、月経痛を強めることにつながります。普段から歩く習慣を身につけるなど、適度な運動によって血行が良くなり痛みの軽減が期待できます。
また、月経痛を緩和する体操を行うことも、骨盤内のうっ血を改善(血流をよくする)し、痛みを緩和することができます。月経痛だけでなくストレッチによるリラックス効果もある簡単な体操です。
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偏った食生活
食生活の改善によって冷えや血流の改善が期待でき、月経痛緩和の手助けとなります。例えば朝食を食べない、お菓子が食事代わりといったバランスの悪い食事では栄養失調状態になってしまい、体の冷えにもつながりやすくなります。
バランスのよい食事を摂ることから
食事をどう改善してよいかわからないという方は、まずはバランスよく主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を摂ることをおすすめします。
朝食を食べる習慣がない方は、まずは何か食べるということから変えていけるとよいですが、パンとコーヒーだけ、スムージーだけ、といった食事よりも、たんぱく質をとりいれたほうが体温を上げやすくなります。
卵や納豆、牛乳やチーズ、豆乳など手軽なものからとりいれましょう。
また、産後の女性を対象とした調査で、魚の摂取頻度が多い女性は中等度以上の月経痛を有するリスクが低いとする研究(※2)もあり、魚に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ビタミンDやビタミンEなどの栄養素が影響していると推測されています。青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸を摂ることは生活習慣病予防にも効果的ですし、不足しがちなビタミンDの摂取は女性に大切な骨密度の維持にも役立ちます。
また、冷えの自覚がある方には、血管を拡張して血行を良くする働きのあるビタミンEを多く含む食品を摂ることもおすすめです。ビタミンEは、オリーブオイルなどの油脂や、かぼちゃ、ナッツ類、アボカドなどに豊富に含まれます。
どれかひとつでも、まずはできそうなことから試して続けてみるとよいでしょう。
できそうなことから生活習慣の見直しを
月経時の悩み以外では特に困ったことはないという方も、生活習慣を見直すことで女性特有の不快な症状を改善するだけでなく、生活習慣病予防などの多くの効果があります。
まずは、自身の生活習慣を振り返り、あなたができそうなことから始めてみましょう。
【参考文献】
※1)宮内 文久(労働者健康安全機構愛媛労災病院), 大角 尚子, 香川 秀之, 星野 寛美, 松江 陽一, 中山 昌樹, 藤原 多子, 志岐 保彦, 伊藤 公彦, 辰田 仁美, 東矢 俊光
日本職業・災害医学会会誌(1345-2592)66巻3号 Page221-226(2018.05)
※2)Yokoyama E, Takeda T, Watanabe Z, Iwama N, Satoh M, Murakami T, Sakurai K, Shiga N, Tatsuta N, Saito M, Tachibana M, Arima T, Kuriyama S, Metoki H, Yaegashi N. Association of fish intake with menstrual pain: A cross-sectional study of the Japan Environment and Children's Study. PLo doi: 10.1371/journal.pone.0269042. PMID: 35862448; PMCID: PMC9302766.
S One. 2022 Jul 21;17(7):e0269042.