食を味わうワンランクアップの試み

2017/10/24 掲載

味覚(イメージ)

私たちは、同じ料理を食べて、美味しいと感じる方もいればまずいと感じる方もいます。また、料理の味付けに何が使われているかが分かる、味に敏感な方もいればそうでない方もいます。人によって感じ方は様々です。


今までの食経験や味の好みも関係がありますが、その方自身の味覚力も影響しています。味覚が繊細であると、食の味わいを一層楽しめることでしょう。

逆に味覚が鈍感だと、味わうことをしないで食べる行為だけになってしまい、塩分や糖分の摂り過ぎから病気にも繋がりかねません。普段、ご自身の味覚について気にすることは少ないかもしれませんが、この機会に考えてみましょう。

味を感じる仕組みとは?

口の中(イメージ9私たちの口の中には「味蕾(みらい)」と言われる味を感じる感覚器官があります。味蕾の多くは舌にあり、その味蕾の中にある味細胞(みさいぼう)が味の信号を脳へと送り、私たちは甘味や塩味などを感じています。味蕾は乳児期には1万個ほどあると言われていますが、年齢を重ねるとともに減少し、成人では約5000個あると言われています。 (※1)

一つの味蕾に一つの味細胞があるというわけではなく、一つの味蕾の中に約100個の味細胞があり、複数の味を感じ取っています。

その味細胞では、「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」「旨味」の5基本味のそれぞれの味に反応する働き(受容体)があり、役割と特徴があります。 (※2)


 

5基本味 代表的な物質 特徴
甘味 ブドウ糖、人工甘味料 エネルギー源
うま味 グルタミン酸、グアニル酸 アミノ酸や核酸の供給
塩味 食塩 ミネラルの供給
酸味 クエン酸、酢酸 腐敗のシグナル
苦味 カフェイン、ニコチン 毒物の警告

このように、味を感じるには受容体を通して、脳へと送られるため、味蕾の感覚をしっかりと働かせることが食べ物をより深く味わうミソとなります。

味蕾を感じやすくするために

味蕾の感度を上げるために、日々気をつける3つのポイントをお伝えします。


薄味を心がける(イメージ)

1.薄味を心がける (※2)

濃い味ばかりを食べていると、最初は濃いと思っていても段々と慣れてしまいます。そうすると、薄い味のものを食べても味を感じにくくなってしまったり、複雑な味を理解できなかったりと味覚が鈍ってしまいます。普段から薄味を心掛け、食材本来の味を感じ、味覚を研ぎ澄ますことで、今まで気付かなかった味に気づくでしょう。

唾液を出す(イメージ)

2.唾液を出す

食べ物に含まれている物質を味蕾が感じ取るには、唾液と混ざることが大切です。しかし、加齢やストレス、病気などによって唾液の分泌が減ってしまうと、味覚を感じにくくなってしまいます。口が乾燥している時は、ガムを噛んだり、梅干しなど酸っぱいものを食べたりして唾液量を増やしてから食事をすると良いでしょう。


また、唾液線マッサージや、よく噛んで食事をするなど唾液の分泌を助ける習慣をもつことも大切です。


【唾液腺マッサージ】

だ液腺は口腔内に3ヶ所あります。
力を入れずに指で軽く圧迫するように、やさしく行うようにしてください。

  • 1. 耳下腺(じかせん)/耳たぶのやや前方、上の奥歯のあたり
  • 2. 顎下腺(がっかせん)/顎の骨の内側の柔らかい部分
  • 3. 舌下腺(ぜっかせん)/舌顎から舌を押し上げる

やってみよう!唾液腺マッサージ

http://www.kokucare.jp/training/training/daekisen/

3.亜鉛を積極的に摂る (※3 ※4)

舌の細胞には亜鉛が豊富にあり、10日のサイクルで生まれ変わります。
そのため亜鉛不足になると、味細胞がうまく作られないため、味覚が感じにくくなってしまいます。また、食品添加物やアルコールの摂り過ぎは亜鉛の吸収を阻害すると言われています。食品添加物を多く含む加工食品の食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎに気をつけ、亜鉛を多く含む食品をしっかり食べるようにしましょう。


【亜鉛を多く含む食品(100g当たり)】

亜鉛を多く含む食品(イメージ)

牡蠣(13.2mg)
煮干し(7.2mg)
ビーフジャーキー(8.8mg)
豚 レバー(6.9mg)
パルメザンチーズ(7.3mg)
カシューナッツ (5.4mg)
ごま(5.9mg)


以上のように、味蕾の感度を上げ、味覚をしっかりと働かせることが大切です。
また、特定の食べ物を専門とするソムリエの方は、味覚が鈍らないように煙草は吸わないそうです。 (※5)


最後に、私たちが美味しさを感じるのは、「味覚」以外にも「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」などの五感を総合的に使っています。
味だけでなく、見た目や食感、匂い、雰囲気など様々な情報をもとに美味しさの評価を行っています。この食経験がのちに、苦手な食べ物を克服したり、より複雑な味を理解したりすることに繋がり、美味しさの幅を広げていきます。

加齢や食習慣などで変化する味覚ですが、良い方向に進むも悪い方向に進むも、今の習慣次第です。ぜひ、味覚を鍛える生活を送って、食の味わいを楽しみましょう!



【参考資料】

  • ※1 子どものための味覚教育 石井克枝、ジャック・ピュイゼ、坂井信之、田尻泉 講談社
  • ※2 味覚力を鍛えれば病気にならない 鈴木隆一 講談社
  • ※3 味覚と嗜好のサイエンス 伏木亨 丸善
  • ※4 亜鉛欠乏症の診療指針 2016 一般社団法人 日本臨床栄養学会
  • ※5 おいしさの秘密! 伏木亨、飯島奈美 (株)メディアファクトリー

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。