フリーラジカルって何?「老化」を考える
2012/03/28 掲載
突然ですが、質問です。
「あなたは年齢より若く見られていますか?老けて見られていますか?」
なぜこのような質問をしたかというと、高齢者の双子に関する研究で「双子のうち、見た目の若い方が長生きをした」という結果がでたそうです。高齢の双子の写真を別々に見せて、年齢をより若く評価された方が長生きだったとのことです。内面の健康は見た目でわかるということでしょうか?高齢者に関しての研究結果ですが、「見た目が若い方が長生き」というのは気になった話題でした。
ところで、この老いること=老化とは、何でしょうか?広辞苑によると、老化とは「年をとるにつれ生理機能がおとろえること。時間経過とともに変化し、特有の性質を失うこと。劣化。」とされています。またほかでは、「加齢に伴うデメリットで、体の機能が衰えること。」とのこと。年齢を重ねるという意味で使われる「加齢」とは違い、カラダの機能の衰えに注目した言葉のようです。
フリーラジカル説から老化を考える
「老化」が科学的に研究され始めたのは20世紀半ばからで、ホルモン分泌の異常化や遺伝子の損傷など諸説ありますが、現在有力とされているのがフリーラジカル説です。今回は、フリーラジカル説から老化を考えたいと思います。
ヒトは組織の集合体で、組織は細胞の集合体です(ヒトは約60兆個!!の細胞から構成されています)。 そして細胞は様々な分子の集合体です。分子構造中には電子がます。電子は2つ1組=対の構造で安定します。 しかし、対になっていない電子を持つ分子が存在し、それがフリーラジカルです。 対でない電子は不安定なので、他の分子から電子を取って対になり安定しようとします。 今まで安定だった分子は、電子を1つ取られたことにより不安定になります。
人で例えてみます。たくさんのグループ(分子)があります。 そのグループ内には寂しがり屋さん(電子)がいます。 2人一緒だと安心(安定)だけど、1人は不安(不安定)です。 不安なこが1人いると、グループ全体も不安です。なので、1人になってしまったら他のグループから1人連れてきて2人になります。 これで安心です。でも、今度は連れてこられた子がいたグループが不安になってしまします。 なので、また他のグループから1人連れてこようと思います。これを繰り返すことで、バランスが崩れていきます。
全てのフリーラジカルがこのように他分子の電子を取ろうとするわけではないのですが、 その傾向が強い酸素種が特に「活性酸素」と呼ばれます。活性酸素は、 ヒトが生きていくうえで必要なエネルギー生産、侵入異物攻撃、 不要な細胞の処理、細胞情報伝達など色々な機能に使われます。しかし、必要より多い活性酸素は、 生体構造・機能に重要な脂質・蛋白質・酵素や、DNAを酸化させて生体構造・機能を乱します。 この活性酸素による生体への悪影響と、これに対する抵抗力(=抗酸化作用)の差が「酸化ストレス」と呼ばれています。
つまり、余剰の活性酸素はカラダの色々な部位に酸化ストレスを与えます。 同じく人で例えると、エネルギーのある若者(活性酸素)は居場所(利用先)があれば、 まじめに働きます。でも居場所がないと不良になって悪さ(正常な細胞を攻撃)をします。 しかし、このとき一生懸命になってくれる大人(抗酸化物質)が来ると、悪さをやめて撤退します。 悪さをすると、周りが嫌な感じ(酸化ストレス)を受けます。
酸化ストレスは老化の速度を速めます。酸化ストレスを受けないためには、抗酸化物質の存在が欠かせません。体内でも抗酸化物質は作られていますし、抗酸化作用があるとされる食品もあります。逆に、喫煙や精神的ストレスなど酸化ストレスを増大させてしまう要素もあります。
「酸化」ですので、酸素を取り込むこと=呼吸も酸化です。酸素を多く取り込むことがいけないとなると、酸素を多く取り込むこと=運動もよくないのではないかと考えてしまいそうですよね。運動時には酸素消費が安静時の10~15倍に、骨格筋では100倍にまでなるそうです。しかし、適度(重要!)な有酸素運動は体の抗酸化力を活性し、逆に酸化ストレスを軽減させるそうです。そして単発よりも持続することでより効果があるそうです。このような結果は、動物実験でもヒトを対象とした研究でも示されています。
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(参考資料:K Christensen et al. “Perceived age as clinically useful biomarker of ageing: cohort study”, BMJ, 2009.
江口ら,”酸化ストレスと健康”,生物試料分析,32(4),247-256,2009.
遠藤ら,”運動による酸化ストレス・レドックスの変化”,第48回日本生体医工学会大会,2009.
日本臨床増刊号,”身体活動・運動と生活習慣病”,2009. )