関心が高まっている昆虫食とは

2024/12/10 掲載

皆さんは「昆虫食」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?
虫を食べると聞くと、少し抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

多くの方は昆虫食に馴染みがないと思いますが、近年、環境への配慮や食料資源の持続可能性などの観点から、昆虫食に対する関心が高まっています。

なぜ最近、昆虫食への関心が高まっているのか?

国連「World Population Prospects 2024」によると、世界の人口は2024年の82億人から2080年代半ばには103億人に達すると予測されています。従来の食料生産システムでは、この需要に対応することが困難とされ、新たな食料資源の確保が急務となっています。

これを解決するためのひとつの選択肢として関心が高まっているのが「昆虫食」です。

このきっかけとなったのは、国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に「食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書」で食料問題への解決策として昆虫食が有用であるとの発表がされたことや、2015年に開催された国連サミットで「昆虫は貴重なタンパク源である」と推奨されたことなどによるもので、わが国でも昆虫食に対してさまざまな角度から研究や開発がすすんでいます。
※Food and Agriculture Organization of the United Nations

世界の昆虫食文化

FAOの2013年報告書「Edible insects: Future prospects for food and feedsecurity」によると、世界の昆虫食の消費は以下のような特徴があることが報告されています。

【地域別の特徴】※1

  • ■ アジア・太平洋地域(全体の47%)
    代表的な食用昆虫:コオロギ、カイコの蛹、竹虫
    一般的な調理法:炒め物、佃煮、揚げ物
  • ■ アフリカ地域(全体の35%)
    代表的な食用昆虫:シロアリ、カミキリムシ、バッタ
    一般的な調理法:炒め物、揚げ物、ペースト状
  • ■ 中南米地域(全体の15%)
    代表的な食用昆虫:イナゴ、チャプリネス(イナゴの一種)、食用アリ
    一般的な調理法:タコス、炒め物、ソース

昆虫食の栄養価

昆虫食の栄養価をご紹介します。
例えば、コオロギには牛肉と同等以上のたんぱく質が含まれ、脂肪は牛肉の約3分の1。また、ビタミンB12が多く含まれているのも特徴です。

ビタミンB12は植物性食品からはなかなか摂取しにくい栄養素であり、新たな供給源として期待されています。最近では、コオロギを使用したプロテイン、チョコレートやせんべいなども販売されるようになりました。

【100gあたりの栄養成分比較】
■ コオロギパウダー(100g)
たんぱく質:約60~70g
鉄分:約18mg
ビタミンB12:約24μg

ただし、実際に私たちが食事で摂取する量はもっと少量です。
コオロギパウダーの現実的な使用量と、比較のために普段の食事の例を合わせて見てみましょう。

【1食分での比較】
■ コオロギパウダー(小さじ1/約3g)
たんぱく質:約2g
鉄分:約0.5mg(成人女性の1日必要量の約4%)
ビタミンB12:約0.7μg(成人の1日必要量の約30%)

★ 焼き鮭1切れ(約80g)
たんぱく質:約20g
鉄分:約1mg
ビタミンB12:約5μg

★ 納豆1パック(45g)
たんぱく質:約8g
鉄分:約1.2mg
ビタミンB12:約0.25μg

★…「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より

環境にやさしい食料源

FAOの報告書によると、昆虫食の環境負荷は従来の畜産と比べて極めて小さいことが示されています。

同じ量のたんぱく質を生産する場合、牛肉と比較した昆虫食(ミールワーム)の環境負荷は下記のとおりです。

水の使用量:約2,000分の1
温室効果ガスの排出:約100分の1
必要な土地面積:約10分の1

※これらの数値は、特定の条件下での研究結果に基づいています。※2

昆虫食で気を付けることは?

初めて昆虫食を試す際は、以下の点に注意しましょう。

1.アレルギーの確認
甲殻類アレルギーがある方は、昆虫食でもアレルギー反応が出る可能性があるため、昆虫食は控えるのをおすすめします。

2.信頼できる製品を選ぶ
国内の認可された施設で製造された製品を選び、表示内容をよく確認することをおすすめします。

3.まずは粉末タイプから
見た目に抵抗がある方は、粉末タイプもあります。粉末タイプだと、スムージーやパンケーキの生地、お味噌汁など、普段の料理に少しずつ取り入れることができます。

食生活を考える

環境への配慮や持続可能な食生活を考えるうえで、昆虫食をひとつの選択肢として捉えてみるのもいいかもしれません。

今回、食の多様性や持続可能な食生活について考えるきっかけとして、最近関心が高まっている昆虫食についてご紹介しました。

【出典】
※1 ※2 FAO Forestry Paper 171 (2013) "Edible insects: Future prospects for food and feed security"

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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