身近になってきたアスリートのベジタリアン食の実際
2021/11/09 掲載
ここ数年、カフェやレストランでもプラントベース(植物性由来)の食事が摂れる環境が整い、スーパーでも気軽にソイミートなど植物性食品の購入ができるようになってきましたね。それと共に、私がサポートしている複数のアスリートたちから、ベジタリアンのタイプのひとつであるヴィーガンの食事について相談を受けるようになってきました。
より良いコンディションやからだづくりのために取り組む選手が増えてきていると感じています。今回は、その実際について少しお伝えしたいと思います。
ベジタリアンのタイプについて
ベジタリアンという言葉は耳にしたことがあるという方が多いと思います。ベジタリアンの中には、色々なタイプが存在していますので、それについて少し確認してみましょう。
タイプ | 内容 |
ヴィーガン | 植物性食品のみを摂取し、動物性食品は口にしない |
ラクト・ベジタリアン | 乳・乳製品は摂取し、肉、魚類は口にしない |
オボ・ベジタリアン | 卵・卵製品を摂取し、肉、魚類は口にしない |
ラクト・オボ・ベジタリアン | 乳・卵は摂取するが、肉や魚類は摂取しない |
ペスコ・タリアン | 肉を食べず、魚・卵・乳製品を食べる |
セミ・ベジタリアン (フレキシタリアン) |
植物性食品をベースに食しますが、場合によっては肉類も食べるなど柔軟性のある食生活 |
※これらの他にも多くのカテゴリーに分類されています。
ベジタリアンと聞くと少し抵抗がある人もいるかもしれませんが、精進料理と聞くといかがでしょうか。精進料理とは、「野菜類、海藻、豆類や豆腐など植物性食品を材料とした料理」とされていますので、ベジタリアンの食事と同様と考えることもできますね。(※1)
食生活変更後の変化の確認が重要
私が普段選手からヴィーガンの食事についての相談を受けた時には、まず、なぜ実施したいのかという目的を確認します。その後、ヴィーガンの食事を実施するのか、別のベジタリアンの食事など、どこまでの内容で実施していきたいのか本人の意向を確認し、それにより、不足しやすい栄養素などについての情報提供を行っています。
食生活を変更した後は、その後の変化の確認が重要です。
まず、選手本人の体感として疲労回復がスムーズにできているかを主観的な疲労度として選手本人が毎朝確認するように伝えています。
疲労度は、0~10の10段階でのチェックで、0が疲れを全く感じない状態、10が何もできないくらい疲れ切った疲労度の状態として、「精神的な疲労度:精神的に感じる疲労感」や「肉体的な疲労度:からだの疲労感」を確認し、食生活などを変えた時の変化を確認するための指標にしています。
また、日々の体重や体組成測定も重要なポイントです。体重減少や体調不良が続いた場合や、その他何か体感的に気になることなどが出てきたら早めに教えてもらうようにしています。豆類や大豆加工品の摂取量が増えることで、食物繊維の摂取量が増加するため、お腹の調子(張り、ガスが溜まるなど)に変化が出る場合もあるので、確認しておき、気になる場合は摂取量などの調整ができると安心です。
ヴィーガンの食事にすることで不足しがちな栄養素について
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■エネルギー
植物性食品に変えていくことで脂質の摂取量などが減少し、エネルギーの摂取量が少なくなってしまう傾向があります。そのため、食事量を増やしたり質の良い油の摂取をすすめたりするほか、補食ではナッツ類などエネルギー量の確保がしやすい食材を提案しています。
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■たんぱく質
豆類や豆の加工品などを積極的に摂ることができていればたんぱく質の不足は起こりにくくなりますが、それらの摂取が少ない場合は必要量に満たない可能性が出てきてしまうので、注意が必要です。
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■ビタミンD
多く含まれる食品:魚類、きのこ類
きのこ類を積極的に摂る必要があります。きくらげや干し椎茸に特に多く含まれるので、炒め物や煮物などには積極的にきのこ類を活用しましょう。ただし、必要量の摂取が難しい場合はサプリメントの活用を検討しても良いかもしれません。
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■ビタミンB12
多く含まれる食品:貝類、魚類、肉類、乳類など動物性食品がほとんど
ビタミンB12は魚や貝など動物性食品に多く含まれるため、不足しがちな栄養素です。植物性食品ではのりからも摂取できるので、味付けのりやのり佃煮、焼きのりなどは常備しておきたい食品です。ただし、加工段階で動物性のエキスが使われている場合もあるため、エキスまで避けたい場合は確認が必要になります。慢性的な不足になりそうな場合は必要に応じてサプリメントの活用を検討しても良いかもしれません。
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■カルシウム
多く含まれる食品:牛乳・乳製品、干し海老、丸干しいわし、ししゃも、しらす、豆腐、納豆、小松菜、水菜、切干大根、ひじきなど
豆腐や納豆、野菜からも摂取できますが、牛乳・乳製品の摂取が習慣化されていた選手の場合は不足しやすい栄養素になるため注意が必要です。
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■鉄
多く含まれる食品:レバー、赤身の肉、カツオ、丸干しいわし、貝類(アサリ、シジミ)、レンズ豆、豆乳、厚揚げ、納豆、小松菜、菜の花など
豆類や厚揚げや納豆などの豆の加工品や野菜からの摂取もできますが、油断をすると不足してしまいがちなので、必要に応じてサプリメントの活用を検討しても良いかもしれません。
自分に合う食スタイルを
ヴィーガンの食事を実施してみたい!という方は、これらの不足しやすい栄養素のことなども理解したうえで実施することをおすすめします。
不足しやすい栄養素の補給方法として、サプリメントを検討することを記載しましたが、アスリートの場合はドーピングリスクなど正しい知識をもち、検討した上で取り入れる必要があります。また、実施前後での採血データなどの確認をすることで栄養補給計画の見直しや修正などもできるので、アスリートの皆さんが実施する場合はチームスタッフや公認スポーツ栄養士、管理栄養士に相談してから実施すると安心です。
自分にとってその食スタイルがあっているのかどうか、体組成やパフォーマンス、疲労回復具合など確認しながら、自分に合う食スタイルを見つけられると良いですね。
【引用文献】
※1 簡明 食辞林 第二版
監修者:小原哲二郎、細谷憲政/発行者:木村繁/発行所:株式会社樹村房