ママさん管理栄養士直伝!子どもの虫歯は親次第

2016/05/10 掲載

あなたは初めて虫歯になったのが何歳頃だったか覚えていますか?
私は小学生の頃、歯科検診で虫歯が見つかり歯医者に行ったことを覚えています。

 

最近の研究では虫歯について数多くのことがわかり、子どもの頃、虫歯菌をいかにつけないようにするかが、歯の一生の健康を左右するということがわかってきています。親がどれだけ意識して子どもに教育するかが重要なポイント!

今回は、乳児期・幼児期・学童期の3つの時期に分けて、注意点などをご説明します。

授乳・離乳食期(乳歯の生え始めの時期)

授乳期間中にも関わらず、虫歯ができて小児歯科を受診する子どもが増えているそうです。


乳歯が生え始めるのは3~9ヶ月頃。生えて間もない歯は質が弱いため、わずかな細菌でも簡単に虫歯になってしまいます。
母乳のみの時期はよいのですが、離乳食を口にするようになると、歯に虫歯を作る細菌が定着し始めます。
糖分の多い食品や飲料を与えると、虫歯を作る細菌が活発になります。
その口腔状態ではたとえ母乳でも細菌への栄養となり、歯が溶ける原因となってしまいます。

 

また母乳のあげ方が原因となる場合もあります。
母乳には7%ほどの乳糖という糖分が含まれています。睡眠中は口を浄化する働きのある唾液の分泌量が少ないため、母乳を寝ながら与える「添い乳」をした場合、虫歯になりやすくなります。

 

虫歯と母乳の関係を調べた日本の研究によると、2歳の時点で母乳を長期間飲んでいた子ども群は、飲んでなかった子ども群と比べて、虫歯のある子どもの数も虫歯の本数の平均も統計的に多いことがわかりました。同時にその生活習慣をみたとき、母乳群では「間食の時間が決まっていない」人が多かったそうです。2歳の時点で母乳を飲んでいた事だけではなく、間食時間のルールがない事で、さらに虫歯になりやすい環境だったと言えます。

 

虫歯を発症するのは、なりやすい環境がいくつか揃ってしまった時と考えられます。

 

これはあくまで虫歯の観点から見た場合です。
母乳をあげることについては、親子のスキンシップや精神安定など別の作用もありますので、あげる場合は虫歯になりにくい環境をととのえてあげるようにしましょう。

 

また、母乳を飲むときは舌を突き出し、乳首を上顎に押しつけてしごいて飲むので、上の前歯に母乳が付着しやすいことがわかっています。下の前歯は舌で覆われているので母乳の付着は少なく、唾液によっても洗い流されやすいので、虫歯になりにくいと言われています。

そのため、上の前歯を中心に磨くようにし、添い乳をする場合はぐっすり寝入ったら、おっぱいを口から外すようにしましょう。そのままの場合、歯の裏側に虫歯ができやすくなります。この時期は虫歯の進行がとても早いので、心配な場合は歯医者さんでチェックしてもらいましょう。

 

幼児期(乳歯が生え揃う時期)

離乳が完了し、乳歯が生え揃うこの時期は大人と近いものを食べ始め、市販のお菓子やジュースを飲む機会も徐々に増えてきます。ただ、生え揃ったといってもまだまだ歯は硬くなってはいません。

歯が硬くなって質が強くなるまでには生えてから2~4年かかると言われています。
最後に生えてくる奥歯(第二乳臼歯)は一般的には3歳頃に生えてくるので、長くて7歳頃まで乳歯の質が弱いと考えられます。

 

しかも、7歳頃は前歯の乳歯から永久歯への生え替わりが起こる時期。
奥歯の質が強くなったら、今度は前歯の質が弱くなってしまいます。

永久歯が生え揃うのは12~13歳頃。
そこから質が強くなるまで2~4年と考えると、1歳頃から17歳頃までは歯の質が弱く細菌の攻撃を受けやすい時期といえます。


その中でも特に奥歯の生え出す1歳半頃~2歳半頃は「感染の窓」とよばれ、虫歯の原因菌に感染することが最も多いといわれています。この時期、特に注意してほしいのが生活習慣を正すことと、家族全員で虫歯対策を行うことです。

 

前述の通り、虫歯は複数のできやすい条件が揃った時に発症します。
唾液の質や量、歯並び、歯の質などは遺伝的な要素が関係するかもしれませんが、他にも虫歯菌の数、虫歯菌のえさ(糖類)の量、虫歯菌が繁殖しやすい環境などがあり、これらは日頃の生活習慣がとても大切。
虫歯菌は唾液を通して感染し、特に子どもとの関わりが多い母親からの感染は約70%といわれています。

母親の口内に虫歯菌が多い場合は子どもの虫歯リスクが高いのです。

 

家族全員が虫歯の治療をしっかりし、口腔環境をととのえることで子どもが虫歯で苦しむことがなくなるのです。
それに加えて間食を与えすぎたり、ダラダラあげたりすることをやめ、生活習慣を正す事も同時に行っていけば子どもを虫歯から守ることができます。もちろん歯磨きをしっかりすることもお忘れなく!

 

学童期(永久歯への生え替わり時期)

前述の通り、この時期は永久歯の生え替わりが始まり、永久歯と乳歯が混在し歯磨きもしにくくなる時期。

また、仕上げ磨きを嫌がって自分で歯磨きを行うようになり、更に磨き残しができることから虫歯になりやすい時期です。

 

8割以上が歯ブラシの届かない臼歯の溝から発生しているという報告もあります。

 

実は、この部分から発生した虫歯は砂糖の摂取量や摂取頻度と関係がないということがわかってきています。

 

つまり、甘いものを控えていたり、ダラダラ食べないようにしていても臼歯の溝は虫歯になりやすいということです。

 

 

そのため、最近ではこの部分の溝を虫歯になる前にセメントなどで埋めて、磨き残しを極力少なくする「シーラント」という方法やフッ化物(歯の質を強くする)を利用することで予防が可能となってきました。

 

 

 

歯は食の入り口。しっかり自分の歯で噛むことができれば、美味しく食べることができ、それが結果的に健康にも繋がります。

8020(80歳で20本の歯を残そう)運動は子どもの頃から始まっています。
ぜひ家族で生活習慣を見直し、一丸となって虫歯をなくしていきましょう!

 

 

参考文献

厚生労働省 e-ヘルスネット
一般社団法人 日本小児歯科学会
全国小児歯科開業医会

 

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。