体組成計から考える「からだ」と「電気」の関係
2012/03/28 掲載
「からだと電気」といえば、冬の静電気や、低周波治療器やEMS(電気刺激で筋肉を動かす機器)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、ビリビリした感じなど刺激を思い浮かべませんか?色々な方に体組成計に乗っていただくとき、「からだに電気を流しています」というと、たまに「ビリビリするの?」とおっしゃる方がいます。ですが、実際に体組成計に乗っても何も感じませんよね?なぜでしょうか!?
体組成計も低周波治療器も、交流電流※1をからだに流します。しかし、同じ交流電流でもその大きさが全く違います。具体的には、低周波治療器では非常に短い時間ですが、体組成計の100~1000倍の電流が流れるといいます(電流を刺激と感じるかどうかは、電流の大きさと流れる時間によります)。この電流の大きさの違いが、体組成計と低周波治療器などの違いです。(冬に静電気でバチっとくるのは、また原理が違います。)
※1 交流電流は、周期的に流れる向きを変える電気の流れです。普通、交流電流というと図1に示すような波を考えます。
乾電池は直流、すなわち流れる向きが変わらない電気を流します。
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体組成計で使用している電流は小さいため、電流が流れてもからだが感じることはありません。
このように認知できる刺激を受けないとき、ヒトのからだは単なる導体(電気を流すもの)と考えられます。
電気を通しやすいかどうかは、周波数が変わると変わることで変化します。
そして電気の流れやすさを変える原因となるものは1つではなく、周波数帯によって異なることがわかっています。非常に高い周波数帯では水の分子構造が原因になり、周波数が十分に低いとき(低周波治療器レベル)は分子レベルのメカニズム、体組成計で使われる周波数帯では細胞の構造が原因になると言われています。
細胞は、細胞膜と呼ばれる膜で細胞の中と外を分けています(中学校の理科の教科書などで、見覚えがないでしょうか?)。
細胞の中と外は電気を流す液体で満たされています。細胞膜は絶縁体(電気を流さない物質)で電気を流しませんが、電気的にはコンデンサのような役割をはたしています。コンデンサとは、導体が絶縁体を挟んだ構造で(図2)、ある方向に電気が流れると導体に電気を貯め、電気の流れの向きが変わると貯めた電気を放出します。
つまり、電気の流れる向きの変化に合わせて、電気を貯める・放出するを繰り返します。
周波数が低いとほとんど貯めるばかりで、電気は流れにくい=電気抵抗が高いです。しかし、周波数が高くなると、電気を貯める・放出するをほぼ同時に行うので、電気は流れやすく=電気抵抗が低くなります。
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からだに電気を流すとき、周波数が低いときは細胞膜に電気が通らないので細胞の外側だけ流れます。だんだんと周波数が高くなると、少しずつ細胞膜にも電気が通るようになり、細胞の内側にも流れるようになります。電気は自動車と同じで、道幅が広いほど流れやすくなります。
つまり、周波数が大きくなって細胞の中も電気が流れる=道幅が広くなると、電気が通りやすくなります。これが、流す電気の周波数によってからだの電気の流れやすさが変わる理由です。
また、からだの組織によっても電気の流れやすさは変わります。具体的には、筋肉は電気を流しやすく、脂肪は電気があまり流れません。この違いは、水分量の違いと考えると分かりやすいかもしれません。 周波数の違いを道幅と考えたので、組織を道の状態と考えてみましょう。
筋肉は舗装された道路で、脂肪はでこぼこの道路に例えられます。 自動車は舗装された道はスムーズに通れますが、でこぼこ道は難しいです。
つまり、自動車(電気)の通りやすさは、道の状態(組織)と幅(周波数)によります。 でこぼこ道で道幅が狭い=脂肪で周波数が低い場合は電気が流れにくく、舗装路で道幅が広い=筋肉で周波数が高い場合は電気が流れやすいと言えます。
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このように、タニタの体組成計はからだに電気を流して、それを基に体脂肪率や筋肉量を推定しています。いつも何気なく乗っている体組成計ですが、ちょっと見方が変わりませんか?「乗るだけで計測できる体脂肪計誕生の裏話」でご紹介しました「体脂肪を測るコツ」を参考に、これからも定期的な健康チェックにお役立て下さい。
(参考資料:斎藤正男、「生体工学」、1985、コロナ社,電気学会 高周波電磁界の生体効果に関する計測技術調査専門委員会編、「電磁界の生体効果と計測」、1995、コロナ社)