睡眠負債の先に潜む…? ソーシャルジェットラグ

2025/01/14 掲載

睡眠負債の暗躍「ソーシャル・ジェットラグ」

「ソーシャル・ジェットラグ」という言葉をご存じですか?
これは、社会的時差ボケといって体内時計が乱れている状態です。

そして、「睡眠負債」とは数日にわたっての睡眠不足の蓄積のことをいいます。

ソーシャル・ジェットラグが及ぼす悪影響

睡眠は、からだを休めるとともに脳を効率よく休めるために重要です。

平均8時間前後だった睡眠が6時間になった場合、この2時間の寝不足が10日間続くと脳は1日徹夜したことと同じ状態に、14日間続いた場合には2日間徹夜したことと同じ状態になります。これは、0.1%の酩酊状態と同じ認知機能であるとの研究結果も出ています。私たちは酔っぱらった状態で通常の生活を正確に行える訳もなく、そのために寝だめを試みるのです。

みなさんも、平日の寝不足を休日の寝だめ(眠りの取り戻し)で解消しようとしたことはありませんか?
この平日と休日の就寝・起床時刻のずれ「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」と呼んでいます。

睡眠負債やソーシャル・ジェットラグが私たちのからだに及ぼす悪影響

ソーシャル・ジェットラグは、日中の眠気や集中力の低下など日常生活への影響だけでなく、病気のリスクも高めます。また、脳が正常に機能しなくなることで心の健康を保つことが難しくなり、対人関係を悪化させることにもなりかねません。

睡眠時間が少ない日本人

日本人は“世界の中で最も睡眠時間が少ない”ということはご存じですか?

2021年に発表された経済協力開発機構(OECD)の平均睡眠時間の各国比較によると、OECD33カ国の中で日本人の睡眠時間は最も短いということがわかっています。特に日本人女性は男性に比べても睡眠時間が短く、世界で最も寝ていないのは日本人女性ということです。

ただでさえ短い睡眠時間を少しでも取り戻すため、寝だめをしてはいけないのでしょうか。

寝だめのコツとは

「寝だめは絶対にダメ」というわけではありません。

日常的に7時間前後眠っている人は死亡や疾患のリスクが最も低く、6時間未満の短い睡眠はそれらのリスクが高まることがわかっています。しかし、平日の睡眠時間が短くても、休日の睡眠時間が長い人は、平日・休日ともに睡眠時間が6~7時間の人と比べて、死亡リスクが増加しないという研究結果もあります。

では、ソーシャル・ジェットラグを起こさないための寝だめのコツはあるのでしょうか。
それは「中央睡眠時刻をずらさない」ことです。

中央睡眠時刻

休日だからと遅寝遅起きでなく、早寝遅起きで中央時刻を合わせることがポイントです。

睡眠には“質”も重要

ここまで睡眠の“時間”の話をしてきましたが、睡眠には“質”も重要です。

睡眠の質が死亡リスクと関わりがあることがわかってきました。
そこで、睡眠の質をはかる指標として「睡眠休養感」が重要視されています。「睡眠休養感」とは、睡眠によって休まった感覚を「スッキリ目覚められたか」という、その人の主観5段階で評価するというシンプルなものです。

睡眠休養感=スッキリ感

睡眠時間がしっかり確保できていても睡眠休養感が低ければ、死亡リスクが高まります。反対に、睡眠時間が少なくても睡眠休養感が高ければ、死亡リスクを多少抑えることができるのです。

【睡眠のための休養感を高めるポイント】
  1. 適度な長さで休養感のある睡眠を働く世代は6時間以上を目安に十分な睡眠時間を確保、リタイア世代は睡眠休養感が乏しい場合には、寝床に8時間以上とどまらない
  2. 光、温度、音に配慮した快適な睡眠環境を
  3. 適度な運動習慣を身につけ、朝食を抜かず、寝る直前の食事を控える
  4. 嗜好品とのつきあい方を見直し、カフェイン、飲酒、喫煙は控えめに
  5. 眠りに不安を覚えたら専門家に相談を

一昔前は、24時間しかない1日の中で真っ先に削られるのが睡眠でした。しかし、昨今では睡眠の価値が見直され、とても重要なものとなりました。

睡眠が私たちの未来を変えるかもしれません。睡眠のために、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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