認知機能の維持などに関わる栄養素BDNFとは?

2022/05/10 掲載

認知機能の維持などに関わる栄養素BDNFとは?

年齢とともに、認知機能をいかに低下させないかということが気になってきますよね。
筆者も認知機能や脳の働きが気になる年ごろになり、テレビCMで頻繁に紹介されている認知機能に着目したサプリメントなどの商品がとても気になっています。

認知機能に効果のある栄養素というと、魚の油に含まれるDHAや、腸と脳の関係に着目した乳酸菌が思い浮かぶ方もいるかもしれません。実際、インターネット上で検索すると、DHAやEPAなどの脂肪酸、イチョウ葉エキス、乳酸菌関連の商品など、多くの栄養成分がサプリメントなどの商品として販売されているようです。
※サプリメントや民間療法などのエビデンスについては、厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』をご確認ください。

認知機能の維持や改善については、生活習慣全般が影響していますが、やはり「これを摂ると効果がある」といわれると気になるところ……。

今回は様々ある栄養成分の中で、最新の知見から、脳の活性化に関連して注目されている「BDNF」についてご紹介します。

BDNFってなに?

認知機能の維持などに関わる栄養素BDNFとは?

BDNFとはBrain-derived neurotrophic factorの略称。脳由来神経栄養因子と呼ばれるたんぱく質の一種で、神経細胞の成長や再生を促す物質として知られています。(わあ、なんだか一気に難しくなりましたね。)
BDNFは、私たちの脳の中で記憶をつかさどる「海馬」に多く含まれ、神経細胞の働きを活性化してくれることがわかってきています。つまり、脳の活性化に大きな役割を持っているのです。

また、BDNFは脳だけでなく、血液中にも存在しており、加齢とともに、その量が低下してきています。そのため、加齢とともに認知機能が低下する原因のひとつになる可能性が考えられているのです。

BDNFを増やすには?

では、どうすれば、減ってしまうBDNFを増やしたり、維持することができるのでしょうか?
運動とBDNFは有酸素運動、とりわけ、中強度から高強度の運動を中長期にわたって行うことによって、血中のBDNF濃度が上昇することがわかっています。

運動の特長
・軽度の運動では効果が期待できない
・1回の運動ではなく、定期的かつ長期間の運動習慣が効果的

BDNFを食事から補える可能性
そして、最近の研究では、食事からもこのBDNFが補える可能性が報告されています。
「カマンベールチーズ」や「高カカオチョコレート」「発芽玄米」などを実際に人に食べてもらい、効果を検証する研究がおこなわれていました。

認知機能の維持などに関わる栄養素BDNFとは?

「カマンベールチーズ」については、日本人の高齢女性約70人に、1日2ピースのカマンベールチーズを3カ月間摂取した場合と別のチーズを摂取した場合と比べ、BDNFの濃度が有意に増加していることがわかりました。更に期間をおいて反対のチーズを食べて血液中のBDNFが増えるかを調べても、カマンベールチーズのみに増加がみられたという結果です。今後、長期間摂取した場合の調査が行われていく予定となっています。

「高カカオチョコレート」についても日本人に対する研究で、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを4週間、毎日25g食べてもらい血中のBDNF濃度を比較したところ有意に上昇していることが確認されています。

研究はこれからも進む

「今後、長期間続けて食べたらどうなるか」「BDNFが増えたことで、本当に認知症の予防や認知機能の改善につながるか」などの研究は、これからもどんどん進んでいきます。

食品ですので明日からすぐにからだが変わるということはありませんが、カマンベールチーズも高カカオチョコレートも入手しやすく手軽に食べやすいものなので、試してみるのも良いかもしれませんね。
今後も、このような研究に注目していきたいと思います。

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。