私たちのからだは腸が守っている?!知られざる腸の免疫機能

2019/11/12 掲載

今年もインフルエンザが流行し始めたようです。

 

私たちのからだをインフルエンザなどのウイルスや病原菌から守ってくれるのが、からだの「免疫」のはたらきです。この免疫、実は腸がそのはたらきの鍵を握っているといわれています。皆さん、腸というと消化・吸収をしてくれる器官というイメージがありませんか?

腸と免疫には一体どんな関係があるのでしょうか。今回は腸と免疫の深い関係についてご紹介します。

 

腸の免疫機能の種類は二つある!

私たちの腸を含む消化器官は、口から始まり食道、胃、十二指腸、小腸、大腸と肛門までが一つの管でつながっています。(図1)

 

腸内は、「からだの内側」というイメージがあるかもしれませんが、実は外側と直結していることから「からだの外側」なのです。このため、私たちの腸は、食べ物を消化吸収する際に、口から一緒に侵入したウイルスや病原菌もからだに取り込んでしまう危険と隣り合わせにある器官であるともいえます。

このことから、腸では外敵の侵入からからだを守る免疫機能が働いていて、さまざまな「免疫細胞」や、からだに侵入してきたウイルスや病原菌と直接戦う「抗体」が存在します。

 

なんとその数は、からだ全体の免疫細胞の60%以上が腸に集まっているともいわれています。この腸で働いている免疫機能は、大きく分けて二種類あります。

 

①腸内で菌と直接戦う免疫細胞と抗体

私たちの腸内にウイルスや病原菌が入ってくると、腸壁の内側にある「免疫細胞」が反応して「抗体」を生みだします。

「抗体」は、腸壁の内側から腸内に放出されると、直接ウイルスや病原菌を倒しにかかります。こうして腸内に侵入してきたウイルスや病原菌を倒すことで、からだの内側へのウイルスや病原菌の侵入を防いでくれるのです。(図2)

では、なぜ腸にたくさんの「免疫細胞」が存在するのでしょうか。それは、腸内に侵入してきたウイルスや病原菌だけでなく、もともと腸内にいる菌も腸内環境などによっては、からだの敵となる悪玉菌になりかねないため、菌と直接戦う「抗体」がたくさん必要となるからなのです。

②わざと菌を腸壁の内側にとりこんで全身の免疫力を高める

腸での免疫機能というと、直接ウイルスや病原菌と戦うイメージが強いかもしれません。

実は腸には、菌と直接戦う以外の免疫機能も存在するのです。それが免疫機能の二つ目「わざと菌を取り込んで全身の免疫力を高める」というものです。

腸内にウイルスなどが侵入すると、免疫細胞が抗体を生みだして直接菌を倒すと説明しましたが、実は人間の腸壁には、わざと腸壁の内側に一部のウイルスや病原菌を取り込む入口があるのです。それは、ウイルスや病原菌をからだにわざと取り込むことにより、腸壁の内側にある免疫細胞を活性化し、ウイルスや病原菌といった敵の情報を学習させるためです。(図3)

いわば免疫細胞の訓練場といったようなイメージです。そして、敵について学習をした免疫細胞を血液にのせて全身に送り込み、これによって全身の免疫力を高めているのです。(図4)

一見、腸とは関係なさそうなインフルエンザに、「腸の状態をよくして免疫を高めましょう」といわれるのはこういった理由になります。

 

アレルギーと腸

アレルギーの発症にも、この腸の免疫が関わっていることが分かってきています。実は私たちには、「からだに必要なものについては免疫機能を働かせない」という機能が備わっており、これによって腸内では「食べ物」と「ウイルスや病原菌」とを見分けているのです。そして、この機能がまれに「暴走」して発症するのが食物アレルギーなどの「アレルギー反応」です。そしてこの「暴走」が起こってしまうのは、腸内環境の悪化が深く関係しているということが最近の研究で分かってきました。

腸内環境が悪化すると、腸の免疫がうまく機能しなくなり、敵ではない食べ物を攻撃したり、反対にウイルスや病原菌と戦わず、からだの内側に取り込んでしまうことが起こるのです。これが、アレルギー反応を起こす原因です。腸内環境を整えることで、こういった免疫機能の低下を予防することができ、アレルギー反応も起こりにくくなることが分かっています。最近では、花粉症のシーズン前に「腸内環境を整えましょう」といったことを聞くことがありますが、こういった理由からなのです。

 

まとめ

今回は腸の免疫についてお伝えしました。腸の免疫機能を高めるには、腸内環境を整えることが大切です。腸内環境は日頃の食生活が大きく影響するといわれます。冬のインフルエンザの流行や春の花粉症の時期に向けて、今のうちから腸を元気にして備えましょう!

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