消費エネルギー増やしませんか?

2012/03/30 掲載

突然ですが、定期的に運動されていますか?

健康維持や肥満防止、減量のために運動が大切だとわかってはいても、忙しくて運動する時間が作れなかったり、運動が好きでなかったり・・・。厚生労働省から報告されている国民健康・栄養調査では週2日以上運動している人は日本人の約30%のみだそうです。

私はタニタで働いている事もあって周囲の人たちから、学生の頃はスポーツをしていたけど社会人になってから時間がなくて何もしなかったら太ったよ~どうしたらいい?なんていう相談をよく受けます。 肥満防止や減量目的での運動にはさまざまな効果がありますが、そのひとつに消費エネルギー量が増えることが挙げられます。 ヒトは摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスがとれていることで体重が維持されます。摂取エネルギーの方が多ければ体重増加してしまい、消費エネルギーの方が多ければ体重減少します。 消費エネルギー量を増やすには運動をたくさんしてというのが理想的ですが、なかなかできない人が多いのが現実のようです。運動をしていない人が食べ過ぎてまったら、体重が増えるのかといえば必ずしもそうではなく、消費エネルギーを考えたとき、どうやら運動以外でも太らないポイントがあるようです!

エネルギー代謝のNEAT(ニート)という言葉をご存知ですか?

ニート(NEET)といえば社会問題になっていることですよね。 しかし今回ご紹介するNEAT(NEETとはアルファベットのつづりが違います)はまったく違った意味で、1999年に論文が発表されて以来、エネルギー代謝関連の学会などで国際的に注目されている用語です。 NEATとは、Non-Exercise-Activity-thermogenesisの略語で、ウォーキングやスポーツではなく、運動以外の身体活動によるエネルギー消費量のことを差します。この運動以外の身体活動には、買い物や通勤時の歩行、掃除洗濯などの家事、庭仕事、余暇活動、仕事中の活動さらには座っているときおよび立っているときの姿勢の保持、貧乏ゆすりなどが当てはまります。

アスリートを除く標準的な体格の日本人における、1日の消費エネルギー量の内訳(図参照)は人が生きていくために最低限必要で、動かなくても消費するエネルギー量である基礎代謝量が半分以上を占め、食べたものの消化や吸収するためのエネルギーとして使われる食事誘発性体熱産生、運動、NEATに分けられます。個人差があり、長時間運動されている方は当てはまらないことも考えられますが、一般の方では運動よりもNEATで消費するエネルギー量の方が多いのです。これまでの研究で多い人では1日で最大2000kcal(!)程度にまで及ぶとも考えられています。


 

太っている人と太っていない人では、生活スタイルが違う!?

NEATは個人間の差が大きく、消費エネルギーの多くをNEATが占めることから、肥満と何か関係があるのではないかと注目が集まっています。 これまでの研究で、肥満者と非肥満者の消費エネルギー量や生活行動を調べたところ、肥満者は非肥満者よりも座っている時間が長く、立っている時間が短かったと報告されています。もちろん座っているよりも立っているほうが消費エネルギー量は高くなります。この実験での1日の肥満者と非肥満者のNEATの差はおおよそ350kcalになったとのことです。350kcalとはいちごのショートケーキ約1個分に相当するエネルギーです。1週間では2450kcalそう考えると大きな差ですよね。

さらに、非肥満者に過食をさせた後、体脂肪の増加量とNEATの関係を調べたところ、1日1000kcal 余計に過食させ、体重増加をさせた後、体脂肪量の増加が少なかった人は、NEATも増加していたとのことです。これは、体脂肪量の増加が少なかった人は、食べすぎた分いつもより活動的に生活をしたということです。食べすぎた後に消費エネルギー量を増やして体重増加を防ぐことは重要ですが、運動ではなくNEATでも効果があるとは!これならすぐ実行できそうですよね!

NEATを増やそう

このようにいくつかの研究報告がされているNEATですが、まだまだ研究段階ですのでNEATを増やすことで減量できるといったことや肥満との関係については残念ながらまだ明確にはなっていません。しかしこれまでの報告から、肥満予防や減量に効果があることが期待できるのでは?と思います。 運動する時間がなかなか作れないという方でも、歩ける距離であれば車を使わない、こまめに家の掃除をする、電車では立つ、駅でエスカレーターではなく階段を使う・・・・運動する時間をとるのが難しいけれど、通勤時に歩く距離を増やしているといった行動は、まさにNEATを増やす行動です!

NEATと活動的な生活は関係しているのかもしれません。自分のライフスタイルに合わせてNEATを増やしてみませんか?例えば、旅行先でおいしいものをたくさん食べたら、観光や遊びで活動的に動いてNEATを増やすことは、体重増加を防ぐ方法のひとつです☆

(参考資料:田中茂穂:身体活動とエネルギー代謝.日本臨床 67:11-15,2009. Levine JA, et al:Interindividual variation in posture allocation:possible role in human obesity. Science 307: 584-586,2005. Levine JA, et al:Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science 283: 212-214,1999.)

 

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