細胞レベルで考える!イヌイットの食習慣から学ぶメタボ対策とは?

2012/03/19 掲載

TOPメタボリックシンドロームが引き起こす怖い病気として有名な、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化。血管が詰まる事で、これらの病気のリスクが高まりますが、なぜ血液はドロドロになってしまうのでしょうか。
「肉類や油の摂りすぎかも・・・」とピンときている人もいるかもしれません。

ですが、北極圏に暮らすイヌイットのようにアザラシの肉や魚ばかり食べていても、血液がサラサラな人々が多くいます。細胞の仕組みを考えながら、その謎に迫りましょう!

細胞の中の脂質の役割って?

わたしたちのからだの中で、脂質はどんな役割を果たしているのでしょうか?
脂肪と言えばおなか周りに付く、皮下脂肪のイメージが強いと思いますが脂質の働きには、エネルギーを貯蔵する、体温を保つ断熱材となる、皮膚を保護するなど様々あります。
そして、「細胞膜として利用される」という役割も持っています。

生物の構造上の最小単位である細胞は、核などの様々な小器官から構成されていますが、細胞膜がこれらを守り、膜の外と情報や物質のやりとりを行っています。(図-A)

細胞膜は主に、たんぱく質と脂質で構成されています。
この膜は、わたし達が食べた食事が材料となっていますが、特に脂質は食べたものがそのままついています。(図-B)

つまり牛肉が好きな人は牛肉の脂質が、サンマが好きな人はサンマの脂質がついているのです。

 

脂質の構造の違いが、血液サラサラ・ドロドロを生み出していた

細胞膜の脂質は主に、水になじむ部分と、油になじむ部分を持った「リン脂質」という成分で出来ています。(図‐C)
この脂質を多く含む、油になじむ部分に注目しましょう。この部分は、飽和脂質と不飽和脂質によって構成されています。


図

 

飽和脂質は動物性のあぶらに多く含まれる脂質、そして不飽和脂質は、n3系・n6系・n9系の3種類に分けられます。
飽和脂質は常温で固体になりやすく、不飽和脂質は飽和脂質より固体になりにくいという性質を持ちます。
このことから、不飽和脂質の方が血管に詰まる原因になりにくい脂質である、と言えます。

細胞膜に「どんな」脂質が使われるかで、血液の流れやすさが変わる

細胞膜には食べた脂質がそのまま使われるため、肉類ばかりを食べていると、細胞膜の脂質が固体になりやすい飽和脂質ばかり
になってしまいます。

細胞膜のあぶらと、血液のドロドロがどう関係があるの?と思われるかもしれませんが、血液も、血管も、
細胞から構成されています。
つまり肉類ばかりを食べ、飽和脂質が体内に増えた場合、血管の細胞膜の流動性が
低くなり血管がしなやかでなくなる、
赤血球の細胞膜も同様の理由で固くなるなどの影響を与え血液がつまりやすくなるのです。

更に、細胞膜から余分な飽和脂質が切り離され、血液中の成分を固まりやすくし血液自体の粘度も高くなります。
このように肉類に偏った食生活は、おなか周りにつく目に見える脂肪としてだけでなく、
細胞レベルで悪影響を与え血流を悪くするのです。

イヌイットが主食とするアザラシや魚のあぶらは、血管を詰まりやすくする飽和脂肪ではなく、
DHA・EPAが多く含まれてた、n3系の不飽和脂質。これらは血管が詰まるのを防ぐ作用があります。
つまり、イヌイットが食べているのは、脂質は脂質でも細胞にも血液にも負担になりにくい脂質なのです。
これがイヌイットが野菜を食べず、アザラシ肉や魚類ばかりを食べても血液がサラサラである理由です。

私たちにイヌイットの食生活は到底マネ出来ませんが、ほんのちょっと普段の食生活で気にかけてみるなど
できることから始めてみましょう。

参考文献
・大西俊一著、『生体膜の動的構造』、東京大学出版会(1980)
・大橋俊夫著、『体験に学ぶからだのはたらき』、医学書院(1996)
 


 

 

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