遺伝だけではない!子どもの身長を伸ばす方法とは?

2018/02/13 掲載

子どもの成長(イメージ)

「最近の子ども達はスタイルも良くて背も高いな」と思って調べてみたら、実は20年前をピークに身長は横ばい傾向が続いていることがわかりました。(※1)
その原因を考えながら、身長を伸ばすために必要な事を調べてみたいと思います。


身長に関わる要因(※2、※3)

【内的要因】 遺伝、ホルモン、代謝、神経系など
【外的要因】 栄養、感染、薬剤、情緒・精神的環境、運動、睡眠、文化・経済水準など


この中でも遺伝の要因が大きく関わっていることは周知の事実です。
子どもの予測身長を両親の身長から算出する式もあります。

子どもの予測身長を両親の身長から算出する式

これが遺伝的要因から見た身長の目安です。遺伝については今から改善することは難しいですが、外的要因については改善できるものもあります。残念ながら倍増するようなことはありませんが、1年に5mmくらいは伸びを増やすことができるようです。


たったの5mmと思われるかもしれませんが、10年間続けたら5cmの差になります。
今も職業によって身長制限を設けている場合があります。もしかすると10年間の努力によって就きたい職業の選択肢に影響があるとしたら・・・この5mmはすごく大きな差に繋がるかもしれません。


身長が伸びるしくみ(※4)

そもそも身長が伸びるとは、どの部分が伸びることなのでしょうか? 骨1本1本の両端には「骨端線」という軟骨部分があります。この部分に、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンや、成長ホルモンによって産生が促されるソマトメジンCという物質が働きかけ、骨を伸ばします。これによって身長が伸びるのです

この骨端線は大人になると固くなり、それにより骨の伸びが止まります。この骨端線がやわらかい成長期のうちに、いかに骨を伸ばす環境を整えてあげるかによって将来の身長が決まります。一生の中で身長を伸ばせる時期は実はすごく短いのです。

骨端線

段階別 発育パターン(※2)

スウェーデン人のカールバーグという人が、1989年に提唱したICPモデルという発育パターンがあります。身長50cm程度で生まれた子どもが約15~18年の間に成長する過程を大きく3つの時期に分けてパターン化しています。

ICP(乳幼児期・前思春期・思春期)モデル


時期 乳幼児期 前思春期 思春期
年齢 0~4歳 男:4~11歳
女:4~10歳
男:11~16歳
女:10~14歳
主な成長因子 栄養 成長ホルモン 性ホルモン
男女差 あまりない あまりない ある
個人差 ある ある あまりない

ICPモデルを見るとわかる通り、人生には2回ほど身長が大幅に伸びる時期があります。1回目は乳幼児期。特に1歳になるまでの1年間では約25cmも身長が伸びます。
2回目は思春期に入ってから「スパート」と呼ばれる急速な成長率の上昇が見られ、1年間で男子約10cm、女子約8cmの伸びが見られます。ただし、この思春期に入ってからのスパートは性ホルモンの影響が大きく、性ホルモンは身長を伸ばす働きと同時に骨の成長を止めてしまうこともわかっています。


最初に述べた通り、骨端線が固くなってしまうと、身長は伸びなくなってしまいます。しかし骨を強く固くすることは大人への第一歩ともいえるのです。まさに、この時期が身長を伸ばすラストスパートなのです。

そして、この思春期の伸びはあまり個人差がないと言われています。誰でも同じように伸びる時期なのです。そのため、成人になってからの身長と最も相関関係が強いのは、思春期開始時点の身長です。成人身長を伸ばすためには、1回目のスパートのある乳幼児期と大きなスパートのない前思春期にいかに身長を高くしておくかというのがポイントになってくるのです。

身長を伸ばすためには(※3、※4、※5)

ここまでで、身長を伸ばすためには「成長ホルモン」と「骨」が重要であることがわかってきました。これらが十分に働けるような環境づくりをすれば身長が伸びる!と言いたいところですが、人間の体はそれだけではうまくいきません。

骨や成長ホルモンに関わる材料が揃っていたとしても、子ども自身に骨を伸ばす体力がなければ成長に繋げることができません。臓器や筋肉を含めた体全体をしっかり作っていくことが大前提として必要となってきます。


そのためには、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルが揃った栄養バランスの良い食事を3食しっかり摂ること。その上で骨の成長や成長ホルモンが十分に働ける栄養をプラスしたり、運動をしたり、しっかり睡眠をとるなどの環境作りも大切です。

成長ホルモンの分泌

仲の良い家族(イメージ)

身長を伸ばすためには、様々な要素が必要なことがわかりました。冒頭でお話した身長の伸びが横ばいである理由については、身長に関わる外的要因が関係していると思われます。この中でも20年前と今で状況が大きく変わってきていることは、外遊びを含む運動の減少と、睡眠時間の減少かもしれません。

また、思春期前後の特に女子は痩せ願望が強くなり、ダイエットの低年齢化などからしっかり栄養が摂れていない子どもが増えている可能性が考えられます。

子どもの成長に欠かせない栄養、運動、睡眠の生活習慣を思春期前までにしっかり親が作ることは、身長の伸びだけでなく、生活習慣病予防などあらゆることにも役立ちます。

そして、これと同じくらい大切だと考えられているもうひとつの要素が「愛情」です。 栄養、運動、睡眠に問題がなくても愛情に不安があって子どもの精神状態が不安定になると、成長ホルモンの分泌が減ると言われています。
また、情緒が不安定だと食欲が落ちたり、熟睡できなくなることも身長の伸びの悪さに繋がってしまいます。

さらに、夫婦仲も子どもの成長に影響していると言われています。
両親の言い争っている姿を見た子どもは無意識に身の危険を感じ、本能的に早く大人になろうとして思春期が早く訪れる傾向が強くなるそうです。思春期が早く来る=身長がまだ低いうちに骨が固まってしまい身長が伸びなくなってしまうことになります。(※5)

生活習慣をしっかり作ってあげることも大切です。しかし、そればかりに目を向けるのではなく、子どもがリラックスしてニコニコ過ごせる環境を作ってあげることも成長には欠かせません。


たっぷりの愛情でお子様の健やかな成長をバックアップしていきましょう。



【参考資料】

  • ※1 平成28年度学校保健統計調査 文部科学省
  • ※2 こどもの身長を伸ばす本 田中敏章著 講談社
  • ※3 子どもの身長を伸ばす成長食レシピ 額田成著 PHP研究所
  • ※4 栄養のプロが教える 最新版 身長を伸ばす栄養とレシピ 石川三知著 学研プラス
  • ※5 [新版]子どもの身長を伸ばすためにできること 額田成著 PHP研究所

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