乗るだけで計測できる体脂肪計誕生の裏話

2012/03/14 掲載

「脂肪をはかれ!」は新入社員の研修テーマだった

今ではおなじみの体脂肪率という言葉も、生みの親はタニタです。
かつて、肥満かどうかは体重の重い・軽いだけで考えられていました。ところが1980年代半ばに「脂肪の量が問題」との意見が肥満学会などから出され、脂肪が注目されるようになったのです。

私たちタニタでも「脂肪をはかれ!」をテーマの一つに掲げました。というと、プロジェクトチームでも組んだと思われるでしょうが、実は当初の担当はたった1人。それも新入社員でした。「脂肪をはかる」研究は新人の研修テーマとしてスタートしたのです。

海外の論文を基に、手と脚で計測する脂肪計を再現

当時すでにアメリカでは、電気抵抗値(インピーダンス)を利用して脂肪量を計測する装置が開発されていました。横になった状態で手と脚に電極をつないで計測するタイプで、日本にも何台か輸入されていましたが、体重計のメーカーであるタニタならば独自のものを作らなければ…と、論文を基にその装置を再現。ところが、無事に完成はしたのに、手と脚に電極を張る方式は、大学病院の研究施設などで計測が面倒なため嫌がられてしまいました。
そこで、何とか体重計に乗るだけで計測できるものが作れないかと研究を重ね、独自の方式をついに開発。しかし…簡単に計測できるようにはなったのですが、計測方式の違いや従来のアメリカ人に合わせた推定式では、日本人の正しい体脂肪率は計測できないことが判明したのです。
 

体格によって、脂肪量の計算方法が違う!?

インピーダンス法では、より正確な計測データを基準に計算式を当てはめ、脂肪量の推定値を導き出すことが必要です。その頃、正確な脂肪計測法といえば、水中体重法しかありませんでした。一見プールのような水中体重計。肺の空気残量など、さまざまな計測が必要となります。水中ではかるので被験者にも負担ですし、1人はかるのに2時間かかります。十分なデータを集めるのに1年近くを要しました。でも、計測を繰り返すうちに面白いこともわかったのです。同じ日本人でも体格によって計算式が変わってくる、と。
そこで、力士やボディビルダーばかりに集まってもらったこともありました。人種や体格によって計算式をつくりました。
現在でも、海外向けの体脂肪計は、必ず現地の人たちのデータを基に商品化しています。
 

世界初の乗るだけで計測する体脂肪計は、48万5千円!

計算式がうまくいけば、次は測り方です。やはり手脚に電極をつける方法は面倒なので、体重計のように足で計測したいと試作に取り掛かりました。そして1992年、世界で初めて、乗るだけで計測できる体重計一体型の「体内脂肪計」が誕生しました。その後はさらにデータを充実させて半年で商品化を実現しました。当時の価格で48万5千円と高価でしたが、使いやすいと大学や医療施設から好評でした。

初の家庭用体脂肪計の誕生は、2年後の1994年。その後コストダウンも進み、多くのご家庭に広がっていきました。今では、体脂肪率はもちろん、内臓脂肪レベルや筋肉量が計測できる体組成計に進化しています。



 

ご家庭で体脂肪をはかるコツ

・姿勢や時間帯、服装、直前の生活状況など、ほぼ同じ条件で計測することが大切です。
・起きた直後や食後は避けましょう。夕方の食事前が一番適しています。
・体が濡れていると正確に測れないので、入浴後や運動後も避けましょう。
・素脚で、裸に近い状態での計測がおすすめです。
・無理のない、自然な姿勢で測りましょう。




 

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