国産ひじきは鉄分70%減?!鉄分補給の新常識!

2016/06/14 掲載

日進月歩 更新される栄養学の世界

みなさん、「ひじきの鉄含有量が減った」という事態をご存知でしょうか。ひじきといえば鉄の補給源として重宝されている食材です。煮物やサラダなど、健康を意識してとられている方も多いのではないでしょうか。そのひじきに何が起こったのか…。答えは「日本食品標準成分表」にあります。1950年に初版が作られて以来、7回目15年ぶりの改訂です。これによると、ひじきに含まれる鉄が改訂前の9分の1に減っているというのです。

 

ひじきは原料の海藻を煮て渋みをとり、乾燥して作られます。以前はひじきを煮る際、鉄製の釜が使われていました。しかし近年、鉄製からステンレス製に代わったため、ひじきに含まれる鉄が減ったというのです。つまり、ひじきの鉄含有量が多かったのは鉄釜のおかげだったというわけです。

 

 

図1 ほしひじきの鉄含有量の比較

釜の種類 鉄(mg/100g)
ステンレス釜 6.2
鉄 釜 58.2

日本食品標準成分表2015年版(七訂)より

鉄の推奨量

ここでふと疑問。鉄って1日にどれくらいとればよいのでしょう。日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、30~60代の男性は7.5mg、女性は6.5mg(月経ありの場合は10.5mg)です。また、妊娠から授乳中にかけてはさらに必要量が増します。(図2)鉄は不足しやすい栄養素といわれており、特に女性やスポーツをされる方は心がけてとりたい栄養素のひとつです。

 

図2 鉄の食事摂取基準(mg/日)

年齢等 推奨量(男) 推奨量(女)
月経なし
推奨量(女)
月経あり
18~29歳 7.0 6.0 10.5
30~49歳 7.5 6.5
50~69歳
70歳以上 6.0 6.0 -
妊婦(付加量)
   初期
  中期・後期
-
 
+2.5
+15.0
-
授乳婦(付加量) +2.5 -

日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要より作図

鉄を摂取しやすくするには?

諸外国ではあらかじめ食品・調味料へ鉄を添加し、鉄欠乏性貧血の減少に一役かっているそうです。日本では食品・調味料への鉄添加は行っておらず、鉄補助食品を利用する人の割合も欧米諸国と比べて低い現状にあります。以下に鉄を多く含む食品をまとめてみました。(図3)こればかりとるのはNGですが、日常的に意識してとりいれるのはよい試みです。例えば、ビタミンCの多いピーマン、ブロッコリーなどの野菜や、たんぱく質の多い食品(肉・魚・卵・大豆製品)と一緒にとることで吸収率がアップするため、それらを組み合わせることをお勧めします。

 

図3 鉄含有量の多い食品

食品名

1食分の
使用量(目安)

鉄(mg)
豚レバー 60g 7.8
鶏レバー 60g 5.4
かつお 90g 1.7
がんもどき 80g(中1個) 2.9
高野豆腐 20g(約1枚) 1.5
納豆 40g(1パック) 1.3
小松菜 100g 2.8
ほうれん草 100g 2.0

日本食品標準成分表 2015年版(七訂)参照

おすすめレシピの紹介

普段の食事を工夫することで、健康的にかつ美味しく鉄を摂取できる方法をご紹介します。スマートフォン・携帯サイトに「タニタ社員食堂レシピ」というコンテンツがあります。「タニタ社員食堂レシピ」の中から、1日に必要な鉄の約7割が補給でき、1食500kcal前後、塩分3g前後になる組み合わせを考えてみました。料理は同サイトからの抜粋です。

 

 

最後に…。ひじきはカルシウムや食物繊維など豊富に含む優れた食品です。おまけに低カロリー。海外の成分表には記載されていない、日本を象徴する食材のひとつです。けれど、どんな食材でもそれだけ食べていれば栄養が充足できるというものではありません。食材を組み合わせて、また旬を感じながら美味しく健康的に食事を楽しみましょう。

 

 

【参考文献】

◆日本食品標準成分表 2015年版(改訂)文部科学省 科学技術部・学術審議会 資源調査分析科会 報告

◆日本人の食事摂取基準 2015年版 菱田明 佐々木敏 監修 P335

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。