ちょっと気になる!所得と健康習慣の関係

2016/01/12 掲載

2015年12月9日、厚生労働省は2014年の国民健康・栄養調査の結果を発表しました。
この調査は毎年行われていますが、この年の重点項目は「所得と生活習慣等に関する状況についての把握」でした。


今回は所得別にみた健康への意識について考察してみたいと思います。

所得と生活習慣等に関する状況

世帯所得を200万円未満、200万円~600万円未満、600万円以上に分け、世帯員の生活習慣の状況を比較したところ、
興味深い結果が得られました。その中で所得による差がみられた項目について詳しく見ていきます。      

(1)食生活

「所得が低い世帯は穀類の摂取量が多い」

所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して

・穀類の摂取量が多く、野菜、肉類、きのこ、乳類の摂取量が少ない。
・エネルギー摂取量が低い
・エネルギー源(※)の中でたんぱく質、脂質が占める割合が低い
・エネルギー源の中で炭水化物が占める割合が高い

 ※エネルギー源・・・エネルギーを供給する食品中の物質(たんぱく質、脂質、炭水化物)

という特徴がみられました。

 

最近はワンコインで食べられる外食やインスタントの加工食品も多く出回っています。
手軽で満腹になるのはよいのですが、栄養バランスとしては炭水化物に偏りがち。
結果的に炭水化物のエネルギーに占める割合が高くなってしまいます。
そして過剰になった炭水化物はやがて体脂肪に。このような生活が続くとやがて肥満に繋がります。

 

【食品を選択する際に重視する点について】
おいしさ、好み、大きさ・量、栄養価、季節感、安全性、鮮度、価格、簡便性、特になしという項目のうち、
所得の低い世帯では「価格」以外の項目を選択する人が少なく、特に所得の低い世帯の男性は「特になし」と回答した人が
多いということがわかりました。

 

この調査について、興味深いのは所得200万円未満だけに差が出るのではなく、
200万円未満と200万円~600万円未満はほぼ同じような割合で、600万円以上との間で差が出ている点。
日本の経済状況だと所得600万円以上にならないと食品を自由に選びにくいということなのでしょうか?

 

2)体型
「所得が低い世帯は肥満者が多く、特に男性はその傾向が顕著」

肥満者の割合は、所得の低い世帯が所得の高い世帯に比べて男女ともに高く、男性は13.2%、女性は4.6%の差がみられました。これは食生活との関係性が大きいと思われます。

 

3)運動(歩数の平均値)
「所得の低い世帯は歩数が少ない」

 

200万円未満

200~600万円未満

600万円以上

男性

6263歩

7606歩

7592歩

女性

6120歩

6447歩

6662歩

 
男女ともに所得の低い世帯の歩数が少ないことがわかります。
合わせて運動習慣のない人の割合が最も高いのもこのグループ。このことから、仕事が忙しくて運動をする時間がなかったり、
デスクワークなど体を動かす仕事ではない人が多いのかもしれません。これが体型にも影響している?!

 

4)たばこ
「所得の低い世帯は喫煙率が高く、特に男性はその傾向が顕著」

現在習慣的に喫煙している人の割合は所得が低い世帯では男性35.4%、女性15.3%、
所得が高い世帯で男性29.2%、女性5.6%と圧倒的な差がみられました。
ストレスでたばこを吸う人もいるかもしれませんが、所得の高い世帯の人達は、たばこにかけているお金を食費にまわしているのかも・・。たばこにかけているお金をどう使うか?は健康のカギを握るひとつかもしれませんね。

 

5)健診受診
「所得の低い世帯は健康診断を受けていない人が多い」

健診未受診者の割合は所得の低い世帯では男性42.9%、女性40.8%。
所得の高い世帯では男性16.1%、女性30.7%と大きな差が見られました。

 

健診未受診者の中で調査を行うと、男女ともに喫煙者、運動習慣がない人、血圧の平均値が高い人の割合が多く、女性については肥満者の割合も高いという結果がみられました。


会社で義務づけられていて健診を受診している人も多くいるとは思いますが、自由選択の場合、健診を受けるかどうかというのは、健康を意識しているかに直結しているというのが、よくわかる結果です。

 

6)歯の本数
「所得の低い世帯は歯の本数が20本揃っていない人が多い」 

歯の本数が20歯未満の人の割合は男女ともに所得の低い世帯が高かったです。
食生活を振り返ると、乳製品の摂取が少ないのもこのグループでした。
乳製品は歯の原料となるカルシウムの供給源。しっかり栄養を摂っていないことが歯の健康にも繋がっているのかもしれません。

 

考察

この結果は今回調査した約3000世帯の結果であって、日本人すべてに当てはまるものではありません。
性別、年齢、世帯人数なども様々ですが、所得と生活習慣には深い結びつきがあることがよくわかりました。

 

この調査を見て感じたことは、やはり健康の土台となるものは食生活であるということ。
食生活・栄養バランスを充実させること!これこそが健康への近道であり、最もコストがかからず健康を手にいれる方法です。
所得を明日から変えるのは難しいですが、明日から食生活の意識を変えることは誰にでもできることです。

 

価格だけで食品を選ぶのではなく、もし健康を害した場合にかかるコストも考えて今食べるものを選ぶようにすると、
結果が変わってくるかもしれません。

 

日々忙しくて、食事を作る時間がない方は、中食・外食を上手に利用して、少しでもバランスのよい食事になるような選び方を知っておくこと。自炊であればすぐに作れて栄養バランスのとれるメニューを知っておくことは将来の健康への第一歩です。

 

食事、運動、休養は健康なからだづくりに欠かせない要素です。
健康な生活習慣をしっかり身につけて、よりよい将来を築いていきましょう!

 

 

 

(参考文献)

・厚生労働省 平成26年「国民健康・栄養調査」の結果

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。