2年間食事記録をした小学生たちが得たものとは?

2016/10/25 掲載

「食育」はご存知ですか?

 皆さんは「食育」について考えたことはありますか?食育とは、様々な経験を通じて、「食」に関する知識と、バランスの良い「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育むことです。※1

タニタから食事や健康に関する情報提供をさせていただいていることも食育のひとつです。特に、子どもに対する食育の重要性が広まっていまっている今、どのように小学校で「食育」を学んでいるのか、タニタが関わった一例をご紹介します。

 

国が注力する「食育」の推進

平成17年に「食育基本法」、平成18年に「食育推進基本計画」の策定が行われ、その後改訂が繰り返されながら現在に至っています。さらに、平成26年度より文部科学省により小中学校対象の「スーパー食育スクール」事業が実施されるなど、公共政策として食育活動が積極的に進められています。

 

「スーパー食育スクール」事業とは、学校における食育を推進するため、文部科学省より指定された学校が、栄養教諭を中心に外部の機関・専門家等と連携しながら食育の推進を図る事業です。※2

 

「スーパー食育スクール」での取り組み

「スーパー食育スクール」事業の実地校に選ばれたある小学校では、栄養教諭を中心とした食育が実施されました。その中で、タブレット端末を利用し、タニタの専用サイトでの食事チェックを2年間毎日行いました。

子どもたちは毎朝学校に到着したら、前日のおやつと夕食、その日の朝食を思い出しながら、「主食、主菜、副菜、果物、牛乳・乳製品」の5種類の中から食べたものをチェックしていきます。

 

食事記録は1ヶ月に1回集計し、平均得点などを書いたシートを子どもたちに渡して、保護者からコメントをいただくということを実施しました。このチェックによって、1年目には子どもたちが自分自身の食事を振り返る、食事のバランスを意識するという習慣がつきました。そして、ご家庭の皆さんにとっては、子どもの食事結果=自身が準備する食事となるため、「客観的に自分が準備する食事バランスを知れてよかった」「食事バランスに気を使うようになった」といった声が聞かれました。しかし、1年目終了の時点で、副菜の品数が、主食や主菜などと比べて足りていない子どもが多いという課題が見つかったため、2年目はこの課題を解決すべく、栄養教諭が、児童や保護者向けの副菜調理実習などの食育授業を行い、バランス良く食事することの大切さを伝えました。すると…見事1年目と比べて、2年目は副菜の品数が増えるという結果になりました!(グラフ1参照)

実際に、保護者へのアンケートで、食事チェックや食育授業を通して、野菜や果物を増やすようになったかアンケートをとったところ、「はい」と回答した方は全学年平均57%と、全国平均よりも高い水準の結果となりました。

 

食事だけじゃない!運動も「食育」

運動に関しても歩数計・活動量計を使用して運動量を増やすことができるか検討しました。その結果、9月~11月は日が落ちるのが早くなり、寒くなるにつれて運動量は低下傾向にあることがわかりました。

そこで、学校内で休み時間に運動量を増やせるように、全校鬼ごっこや身体を動かす昔の遊びを子どもたちに紹介するなどの工夫をしました。また、保護者にも運動の大切さや、日常生活で取り入れられる運動量のアップ方法(エスカレーターより階段を使う、近い距離の移動は車を使わないなど)の情報提供をしました。

 

その結果、1年目の同じ月と比べて2年目は10月~11月と特に運動量が低下しやすい時期でも、歩数が増え、運動量の増加が確認できました。(グラフ2参照)

中には、運動の楽しさを知って運動部に入った子どももいました!

 

食育が生涯の健康を作る!

この2年間の学校での食育を通して、気がついたことがあります。それは、学校での食育の重要性と影響力の大きさです。

誰もが通過する義務教育の場所で、皆が食育を通して健康管理を学ぶことで、その後の長い人生を健康的に送れる可能性が高くなります。そして、子どもだけでなく家庭も巻き込むことで、本人の食事や運動が改善するのはもちろん、それだけでなく家族も健康的な生活を送ることができます。実際、前述の学校にお伺いして、保護者の方々とお会いした際に、家族皆が健康に興味を持って行動するようになりましたとうれしいお声をお聞きすることができました。

学校の食育にはたくさんの可能性があります。ますます盛り上がるように「はかる」ことを通してタニタも、サポートさせていただきます!

また、スーパー食育スクールが実施されていない地域の方でも、子どものいる家庭では、学校でどのような食育の授業が実施されるかを子どもに聞いてみたり、「これが主菜だよ、これが副菜だよ…」という風に、自分の家庭の食事を食育という目線で子どもに説明してみるなど、今日からでも始められることが沢山ありますので、是非できることから食育を始めてみましょう!

 

※文中・グラフのデータは、ある国内の小学校4~6年生の男女を対象としたものです。

 

参考文献

※1…「あしたの暮らしをわかりやすく 政府広報オンライン」

http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201605/3.html

 

※2…「文部科学省HP スーパー食育スクールについて」

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1353368.htm

 

※<グラフ1>は佐賀新聞2016年2月17日記事を改変し、作図

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。