妊娠する前に知っておきたい!妊婦の食事の注意点とは?

2012/10/09 掲載

 

身近な人が妊婦になったり、又は自分自身の妊娠が分かって「母」になったり……。
そうなった時、何を摂ったほうが良くて、何を控えるべきなのか。
今まで全く気にならなかったようなことが気になりだすのではないでしょうか?
例えば、食事や栄養、薬やアルコール、サプリメントなど。情報が多い分判断に迷う方も多いことでしょう。
今回は、厚生労働省や国の機関が公に出している情報を中心に、妊娠中の食事の注意点をご紹介したいと思います。

 

食べた方がよい食品、避けた方がよい食品ってあるの?

妊娠中は特に情報に敏感なので、ありとあらゆる情報を耳にして一喜一憂してしまうことが多くあります。
しかし、実際「食べた方がよい食品」「避けた方がよい食品」というものは栄養素の面からは特にありません。
逆に情報にまどわされて、偏った食生活をしてしまう方がよくない結果を招くこともあります。

 

食生活で大切なことは「バランス」。
バランスをとるためには「いろいろな種類の食品をまんべんなく食べる」ことが大切です。
これは普段健康管理で気をつけていただきたいことと一緒ですね!

 

情報やアドバイスはおおらかに受け止め、「絶対にこうしなければいけない!」と思うのではなく、赤ちゃんとお母さんが安心して過ごすための情報のひとつくらいに受け止めるようにしましょう。
ただ、妊娠中に少し気をつけてほしいことがあります。

 

★リステリア菌

リステリア菌は、ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどにいることが多い食中毒菌。
妊娠中は、一般の人よりもリステリア菌に感染しやすく、赤ちゃんに影響が出ることがあるといわれています。
そのため、リステリア菌が多いといわれているこれらの食品を積極的に摂ることはおすすめできません。
リステリア菌は塩分に強く、冷蔵庫内でもゆっくりと増殖しますが、加熱することで予防できますので、食べる際は十分に加熱することがポイント!

また、リステリア菌以外の食中毒全般にもいつも以上に気をつけるようにしましょう。

 

★水銀

魚は良質なたんぱく質やDHA、EPAなどの良質な脂肪酸、カルシウムなども多く含む食材ですが、魚には、食物連鎖によって自然界に存在する水銀が取り込まれています。
魚を極端にたくさん食べるなど偏った食べ方をすると、この水銀が取り込まれ、赤ちゃんに影響を与える可能性があることが指摘されています。
もちろん、妊婦以外でも同じことは起こっていますが、私達が普段のお食事で体に取り込んでいる水銀の量は、健康に影響を与えないと考えられる最大量の半分程度。
また体の中に取り込まれた水銀は、徐々に体の外に出ていくため、平均的な食生活をしている限り健康への影響は心配ありません。
ただ、おなかの中の赤ちゃんは、お母さんが取り込んだ水銀を体の外に出すことができないため、影響が懸念されています。
しかし、魚すべてに注意が必要なわけではなく、食物連鎖の上位にいる大型の魚が主に挙げられています。
食べる機会が多い魚としては、マカジキ、メカジキ、ミナミマグロ、クロムツ、キンメダイ、クロマグロ、メバチマグロなど。
神経質になりすぎる必要はありませんが、切り身の魚ばかりでなく小型の魚(アジやイワシなど)や、肉や卵、大豆製品などいろいろな食材から栄養を摂るように心がけることがおススメです。

 

妊娠中に不足しがちな栄養素は?

食事摂取基準で妊婦が通常時より多く摂ることを推奨されている栄養素は、エネルギー、たんぱく質、脂質(n-6系脂肪酸)、ビタミンA、D、B1、B2、B6、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレンです。沢山ありますよね……。
これらをしっかり満たすためには、しつこいようですが「いろいろな種類の食品をまんべんなく食べる」ことが基本となります。

 

また、妊娠中に不足しがちな栄養素としては、特に『葉酸』『鉄』『カルシウム』が挙げられます。
特に葉酸については、摂取する時期も重要なので、詳しくご説明します。

 

『葉酸』

葉酸はビタミンB群の一種で、「プテロイルグルタミン酸」が成分名です。
ほうれん草の抽出物から発見され、その名の通り、野菜や果物に多く含まれています。
ただ、葉酸は摂取しにくい成分で食品に含まれる葉酸の体内利用率は「50%程度」と言われ、この利用率を考慮した推奨量が示されています。
妊娠中は、胎児の神経管閉鎖障害に対してのリスク低減が期待できる栄養素であることがわかっているため、積極的な摂取が薦められています。

 

胎児の神経管閉鎖障害とは、妊娠4週~5週間後に起こる脳や脊髄のもと(神経管)が正常に作られなくなる障害のことです。
受胎前後の葉酸摂取がリスク低減に有効であるということは、数多くの研究から明らかにされていますが、妊娠が判明する頃には、既に神経管は形成されていることもあるため、妊娠の1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月までの積極的な摂取が薦められています。

 

要するに、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のためには、妊娠がわかってから摂り始めても遅いということ。
「赤ちゃんがほしいな」と思ったら、まず葉酸を摂り始める!くらいでちょうどよいのです。

 

厚生労働省では、『妊娠を希望している女性は1日に400μgの葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)摂ることが望ましい』としています。

 

ここで注意が必要なのが「葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)」と書かれている点です。
「プテロイルモノグルタミン酸」は葉酸の成分名です。そして先ほどもお伝えした通り、葉酸は体内利用率が50%程度のため、「プテロイルモノグルタミン酸」が400μg必要ということは、「食事性葉酸」に換算すると、なんと800μg必要だということです!

 

800μgの葉酸を通常のお食事からだけで摂取することはかなり困難なため、厚生労働省でも「妊娠初期の人には、神経管閉鎖障害発症リスク低減のために、葉酸の栄養機能食品を利用することもすすめられます」と提言されていますが、1日1mg(=1000μg)は超えないようにとされていますので、たくさん摂れば摂るほどよいというものでもありません。

 

まずは食事の充実、次に葉酸を添加した栄養機能食品や加工食品等の利用、それでも足りなければサプリメントという順番で考えてみましょう。

 

スタートとして、摂取する食品に葉酸がどれくらい含まれているかを下の表でチェックしましょう!

 

≪葉酸を多く含む食品≫(100g中)

・菜の花・・・・・340μg     ・納豆・・・・・120μg
・枝豆・・・・・・320μg     ・鶏レバー・・・1300μg
・モロヘイヤ・・・250μg     ・牛レバー・・・1000μg
・ブロッコリー・・210μg     ・焼きのり・・・190μg(10g中)
・ほうれん草・・・210μg     ・いちご・・・・90μg

 

妊娠中の食事の注意点、いかがでしょうか?
身の回りに妊婦の方がいなかったり、自分はまだ妊娠を考えていない場合は関係ないと思われるかもしれませんが、妊婦の食事の注意点には「妊娠する前から気をつけた方が良いこと」もありますので、いつか身の回りの大切な人が妊娠をした時や、ご自身のライフプランについて考えた際、参考情報として思い出していただければと思います。

 

参照:独立行政法人 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 基礎知識
厚生労働省「これからママになるあなたへ」食べ物について知っておいてほしいこと パンフレット
厚生労働省「これからママになるあなたへ」お魚について知っておいてほしいこと パンフレット

 

 

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。