糖尿病だけじゃない!?全身に影響を及ぼす「歯周病」の脅威

2012/06/20 掲載

「8020運動」という言葉を聞いたことがありますか?

これは、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動の標語です。
親知らずを除く28本の歯のうち、少なくとも20本以上自分の歯があれば、ほとんどの食物を噛み砕くことができ美味しく食べられることから、このような運動が広まっています。
また8020を達成している方は、生活の質(QOL)を良好に保ち、社会活動意欲があるとの調査結果や、歯の残存率が多いと寿命が長いという結果もあるほど、自分の歯を健康に保つことはとても大切です。

私たちが生きていく中で、食べることはとても重要です。
そのためになくてはならないのが『歯』ですが、実は、歯の寿命は長くなった平均寿命に追いついていません。
歯を失う2大原因と言われているのが、「歯周病」と「むし歯」です。
中でも歯周病は、生活習慣病に位置付けられ、糖尿病、心臓病と同様に注意が必要です。

あなたの歯周病度チェック

次の質問にあてはまる項目をチェックしてみましょう。

□ 歯ぐきに赤くはれた部分がある。
□ 口臭が何となく気になる。
□ 歯ぐきがやせてきた感じがする。
□ 歯と歯の間にものがつまりやすい。
□ 歯を磨いたあと、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある。
□ 歯と歯の間の歯ぐきが、鋭角的な三角形ではなく、おむすび形になっている部分がある。
□ ときどき、歯が浮いたような感じがする。
□ 指でさわってみて、少しグラつく歯がある。
□ 歯ぐきから膿が出たことがある。
 

0項目であれば、今のところ心配はありません。引き続き、健康な状態を保っていきましょう。
1~2項目が当てはまれば歯周病の可能性があります。
3~5項目以上なら、初期あるいは、中期歯周炎以上に歯周病が進行している恐れがあります。
できるだけ早めに歯科に行きましょう。

成人の80%以上が歯周病

私たち日本人はどのくらいの割合で歯周病にかかっているのでしょうか?
年齢でみると、歯ぐきに炎症がみられる人のピークは45~54歳で、なんと!88%!!
高齢者に少ないのは、既に歯を失っている人が多いためです。また、驚くべきことに、若年層の歯ぐきでは、
5~14歳の36%、15~24歳の66%の歯ぐきに炎症がみられるという結果に。
このことは、歯周病が決して中高年層の病気ではなく、若いうちからの予防が大切であるということを示しています。

しかし、自分が歯周病かも?なんて思ったこともないけれど…という方も少なくないと思います。
糖尿病や高血圧症などの生活習慣病と歯周病が共通しているのはこの点で、初期段階では本人にあまり自覚症状がありません。ですので、気づいた時にはかなり進行している、なんてことも…。
だからこそ、日頃からの予防がとても大事なのです。

歯周病を放置すると・・・

歯周病はそのまま放置して症状が進むと、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
しかし、歯周病の更に怖いところは、口の中だけにとどまらないことです。
最近、様々な研究により、歯周病と全身の健康との関係が次々にわかってきました。

1.糖尿病との関係

→歯周病は、糖尿病の合併症のひとつと考えられている程、深い関連があるといわれています。
糖尿病の方は、健康な人よりも細菌感染への抵抗力が低下するため、歯周病になりやすいといわれています。
また、逆に歯周病が糖尿病を悪化させる要因のひとつであることもわかってきました。

糖尿病の治療の基本は、「食事」と「運動」のコントロールです。
歯周病が進行すると、しっかり噛めなくなり、軟らかいものばかりを食べることになります。
このような食品には、血糖値を急激に上げやすい、ブドウ糖やショ糖などの吸収の早い糖質が含まれていることも多く、
血糖値のコントロールに支障をきたすことになります。

また、しっかり噛む食品には、糖尿病の方におすすめの「食物繊維」が含まれているものが多く、歯周病になってしっかり噛めなくなることで、この「食物繊維」の摂取量も減ってしまう可能性があります。

糖尿病と歯周病は相互関係があるため、糖尿病になった人は歯周病のケアも、歯周病になった人は糖尿病のケアも同時に行う必要があるようです。実際、歯周病を治療することにより、糖尿病が改善されたという報告もあります。

2.動脈硬化、心筋梗塞などの心疾患につながることも・・・

心臓への歯周病菌の影響を指摘する報告も出てきています。
心臓の弁膜や内膜に発生する細菌性心内膜炎(感染性心内膜炎)のほとんどは、口腔内の細菌が原因であるという報告もあります。

3.誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になることも・・・

→誤嚥性肺炎は、主に高齢者や寝たきりの方に多くみられるもので、咳や食べ物を飲み込む力が低下し、知らない間に細菌が唾液と共に肺に流れ込み、細菌が肺の中で増殖して起こります。また、胃液などの消化液が食べ物と共に食道を逆流して、肺に流れ込むことで起こることもあります。前者の場合、普段の口腔ケアをしっかり行い、口腔内の細菌の数を減らしておくことが予防につながります。

4.妊婦の方は要注意!

→妊娠中は、つわりで食生活が不規則になったり、歯磨きをしっかり行えなかったり、ホルモンの変化で歯肉炎を起こしやすくなったりと、虫歯や歯肉炎が起こりやすい環境になります。
妊娠に気づいたら、できるだけ歯の健康も気遣い、普段以上に口腔ケアを心がけましょう。
また、重症な歯周病にかかった妊婦は、早産や低体重児を出産するリスクが高いという報告もありますので、安定期に入ったら、歯科検診を受けることをおすすめします。

歯の健康を守るために一番大切なことは、日頃のセルフケアです。
1日でも早く口腔ケアを始めて、80歳でも20本以上自分の歯が残せるように頑張りましょう!

 

※参考:「8020推進財団」 http://www.8020zaidan.or.jp/index.html
「京都府歯科医師会」https://www.kda8020.or.jp/
「テーマパーク8020」http://www.jda.or.jp/park/index.html

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。